ソノダマリ(マンションポエム国際比較調査員)
アフリカの高級住宅広告は、豪華さの宣伝文ではない。停まりがちな都市で、どこまで生活を止めずに済むかを売る書類である。そう言い切れるのは、ラゴス、ヨハネスブルク、カサブランカの広告で、眺望より先に電源、水、警備、通学路が並ぶからだ。しかも並び方に各都市の癖が出る。そこが面白い。
ラゴスのイコイで見た一枚は、上半分が夕焼け色の完成予想図、下半分が表だった。見出しは「4 BEDROOM TERRACE WITH BQ」。その直下に price、title、payment plan。設備欄はプールより先に “24 HOURS LIGHT”, “Borehole Water”, “Electric Fence”, “CCTV”, “2 Standby Generators” と続く。発電機の台数まで書く広告は、快適さではなく停止の回避を売っている。英語も妙に生々しい。 “All room ensuit”, “tarred road network”, “good drainage” 。綴りの揺れまで含めて、買い手が知りたい順番がむき出しだ。
南アフリカでは調子が変わる。ヨハネスブルグ北郊の広告は security を言うが、ナイジェリアのように機械室を前へ出さない。代わりに guardhouse、biometric access、clubhouse、landscaped walkway が、薄いグレーのアイコンで整列する。ケープタウン近郊では白壁と切妻の写真に “wine estate living” が重なり、警備は脚注のように処理される。隠しているのではない。危険の説明を、趣味のよい管理へ翻訳している。
ところがカサブランカの広告を見ると、その線引きも崩れる。フランス語の本文は résidence fermée、double vitrage、conciergerie と室内側から書き始めるのに、価格に近い欄だけ急に groupe électrogène de secours と出る。バックアップ電源は品位の後ろに隠れない。さらに湾岸資本を意識した物件では、物件名だけ英語で “Skyline Residences”、下にアラビア語、本文はフランス語という三層になる。植民地の名残という一語では足りない。誰に売るかで、言語は一枚の中で平気で持ち場を替える。
近年いちばん露骨なのは、遠くに住む買い手へ向けた欄外の一文だ。ロンドン番号の WhatsApp、ドル建ての賃料予測、家具付き引き渡し、空港から二十五分。そこまでは投資広告の顔をしているのに、最後に “good road” や “constant light” が戻ってくる。高級住宅広告は夢の絵ではない。都市の故障一覧を、購入特典の体裁で差し出す文書である。ラゴスの紙面で最後まで目を引いたのは、プールでも大理石でもなく、You will never be left in darkness. だった。