ソノダマリ(マンションポエム国際比較調査員)
中央アジアとコーカサスの新築広告を見ていると、文章より先に版面の癖が立つ。ロシア語で площади と срок сдачи をきっちり置いた横に、英語のpremiumや city view が細い金文字で差し込まれる。ここで外来語は飾りではない。価格表の通貨、地区名の綴り、完成予想図の光り方まで含めて、どの階層に街を開くかを指定する記号になっている。
バクーの案件で露骨なのは、住戸の説明より入口の演出が長いことだ。White City 周辺の広告では「closed territory」「24/7 security」が早い段で出て、海を反射したロビー図、真鍮色のエレベーターホール、背の高い観葉植物が続く。ロゴは金のセリフ体で、下部にはロシア語の рассрочка が小さく入る。専有面積より先に、誰と同じ建物に入れるかを見せる書き方である。価格はマナトでも、上昇の気分だけは湾岸の高級街区と同じ形式で輸入されている。
トビリシは逆に、古さを保存せず消費する。旧市街に近い案件ほど、石壁や木製バルコニーの写真に「authentic」の札を貼り、その下で investment や rental income を平然と重ねる。Sololaki や Vake という地区名は住所以上の効能を持ち、住む話と貸す話が同じ段落で切り替わる。観光客向けの短い滞在を念頭に置いた文なのに、コピーの表面だけは土地の記憶を敬ってみせる。そのねじれが、この街の広告をいちばんいやらしくしている。
タシケントはさらに複雑だ。Tashkent City まで何分、新しい大通りにどう抜けるかを大書きしながら、別の欄では「静かな中庭」「厚い壁」「木陰の遊歩道」と、ソ連期街区が持っていた快適さを言い換えて回収する。古い住棟は遅れとして退けられるのに、その利点だけは新築の売り文句に再利用される。更新の広告に見えて、実際には旧い街区の居心地を細かく盗んでいる。ここに出る矛盾は例外ではない。都市改造の宣伝は、だいたいこの二枚舌で進む。
住宅広告は住居を売っていない。入場資格を売っている。
しかも資格の値札は一枚ではない。ロシア語が手続きの安心を請け負い、英語が選別の気配を足す。そこに地区名が載ると、住所は身分証になる。バクーでは門の内側の顔ぶれが先に示され、トビリシでは回転する滞在者が想定客に置かれ、タシケントでは更新の名で古い快適さだけが抜き取られる。広告の残酷さは大げさな夢にない。誰を迎え入れる文なのかを細かく書き込み、残りを最初から客として数えていない点にある。