「ご了承ください」って誰に言ってるの
——お花見の場所取り張り紙

タケウチソウタ

春になると公園に出現するものがある。桜。屋台。酔っ払い。あと、ブルーシート

朝早くに誰かが敷いて、四隅をテープで留めて、真ん中に張り紙を貼って帰る。まだ誰もいない。花も咲ききってない。でもそこにはもう「言葉」がある。

あの張り紙、ちゃんと読んだことある?

先制攻撃としての丁寧語

日曜日。バスケ部の朝練が休みで、ばあちゃんと近所の公園を散歩した。桜の季節。

遊歩道を歩いてたら、芝生にブルーシートが3枚並んでた。まだ朝の8時。人はゼロ。

で、張り紙。

「本日12時より使用いたします。ご了承ください。」

使用いたします。ご了承ください。

ちょっと待て。まだ4時間あるじゃん。今この場所には誰もいない。シートが敷いてあるだけ。なのに「使用いたします」。未来の行為を、もう完了した事実みたいに書いてる。

「ご了承ください」も変だ。了承って、同意するかしないか選べるときに使う言葉じゃないのか。了承しなかったらどうなるの。シートをどかしていいの。ダメでしょ。

つまりこれ、お願いじゃない。宣言だ。「ここは取った。文句言うな」を丁寧語にしてるだけ。

翻訳:
「ご了承ください」=「文句言うな」
「使用いたします」=「もう取った」
丁寧語は防御壁だった。

トイレで見たやつと同じだ

この張り紙を見て、思い出した。コンビニのトイレ。

「いつもきれいに使っていただきありがとうございます。」

あれも変だった。俺、まだ何もしてない。トイレに入った瞬間に「ありがとう」って言われてる。きれいに使うかどうかは、これから俺が決めることじゃん。

でもあの張り紙を見ちゃうと、汚くできない。「ありがとう」って先に言われると、期待に応えなきゃいけない気がする。感謝の先制攻撃。

お花見のブルーシートも同じだ。「ご了承ください」って先に書いておくと、来た人は「まあ、ご了承くださいって書いてあるし」ってなる。了承するかどうか聞かれてないのに、了承させられてる。

トイレ:「ありがとう」→ まだ何もしてないのに感謝で縛る
ブルーシート:「ご了承ください」→ 選択肢がないのに了承で縛る
構造、同じ。

名刺が貼ってある

で、張り紙をもうちょっと読んだ。下の方に書いてあった。

「○○株式会社 営業部一同」

会社名。しかも「営業部一同」。

公園の芝生に、会社の名前が堂々と貼ってある。ブルーシートの上に名刺が置いてあるようなもんだ。

隣のシートも見た。

「△△商事 第二営業課
幹事:タナカ 090-XXXX-XXXX」

電話番号まで書いてある。幹事のタナカさん、朝早くに来てシート敷いて、自分の名前と電話番号を公園に貼って帰ったのか。大変だな。

でも考えてみると、会社名が書いてあることで、逆に正当性が出てる。匿名のシートだったら「誰だよ」ってなるけど、「○○株式会社」って書いてあると、「ああ、ちゃんとした人たちが使うんだな」って思わされる。

名前を出すことで、場所取りが「公式行為」になる。ブルーシートが領土になる。張り紙が国旗になる。

ブルーシート=領土
張り紙=国旗
会社名=国家の名前
「ご了承ください」=独立宣言

大げさか。でもやってること同じじゃん。「ここは俺たちのものです」を、紙一枚で成立させてる。

ばあちゃんは強かった

ばあちゃんが横で見てた。「あんたら最近は大変だねえ」って言った。

「昔はね、朝来て空いてるとこに座ればよかったのよ。場所取りなんてしなかった。早い者勝ち。来た人が座る。それだけ」

それだけ。シンプル。張り紙もない。「ご了承ください」もない。

「シートで取っとくのは、来れない人の分まで確保するからでしょ。便利だけどね、来てない人のために場所を取るって、ちょっと変よね

ばあちゃん、たまにすごいこと言う。

来てない人のための場所取り。そうだ。ブルーシートの上には誰もいない。12時に来る人たちのために、朝8時にシートが敷かれてる。不在の人間が場所を「使用」してる。

これ、前にソノダさんの記事で読んだ何かに似てる。マンションの広告だったか、何だったか。「まだ誰も住んでないのに、もう『暮らし』が語られてる」みたいな。あれと同じだ。まだ来てないのに、もう「使用」してる。

で、俺たちも花見することになった

翌週。バスケ部のグループLINEに、ミウラ先輩から連絡が来た。

「来週の日曜、花見やる。タケウチ場所取り頼む」

俺かよ。

「朝7時には行って。シート敷いて。あ、張り紙も作っといて」

張り紙。あの張り紙を、今度は俺が書くのか。

さすがに「ご了承ください」は書きたくない。だって1週間前に「何言ってんだよ」って思ったばっかだし。でも何も書かないと誰かにシートどかされるかもしれない。

書くしかない。

結局、こう書いた。

「11時から使います。
すみません。
——バスケ部」

「ご了承ください」じゃなくて「すみません」にした。了承を求めるんじゃなくて、謝る。「場所取ってごめん」って。それが正直な気持ちだったから。

でも——

やってること自体は、○○株式会社と同じだ。朝早くに来て、シート敷いて、紙貼って帰る。「すみません」って書いたところで、場所を占拠してることに変わりはない。

「ご了承ください」を笑ってた俺が、
1週間後にブルーシートに張り紙を貼ってた。
丁寧語の選択肢が違うだけだった。

結局、桜は見てなかった

花見当日。ミウラ先輩たちが来て、からあげとポテチとジュースが並んで、みんなで騒いだ。

2時間くらい経って、ふと気づいた。

桜、見てなかった。

ずっとスマホ見てた。写真撮ってた。でも桜じゃなくて、からあげの写真。ミウラ先輩の変顔。ブルーシートの上でふざけてる動画。

「花見」って言うけど、花は見てない。場所を取って、食べて、騒いで、写真撮って帰る。それが花見。

ばあちゃんに「花見どうだった?」って聞かれて、「楽しかった」って言った。嘘じゃない。楽しかった。でも「花を見た」かって聞かれたら、見てない。

「花見」も、ある意味ポエムだったのかもしれない。花を見るためじゃなくて、「花見をした」って言うための行事。

「花見」のうち花を見ていた時間:たぶん3分
からあげを食べていた時間:たぶん40分
スマホを見ていた時間:たぶん1時間
名前と中身、また合ってなかった。

でもまあ、楽しかったからいいか。

「ご了承ください」は使わなかった。それだけで十分だと思うことにする。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。タケウチソウタは架空の人物です。