ソノダマリ(マンションポエム国際比較調査員)
ポランコの高級住宅広告を見ていると、豪華さはまず写真の順番で決まる。外観は三枚目か四枚目、最初に来るのはベージュのリビング、石の天板、窓際に寄せたダイニング、そして人のいないソファだ。説明文の一行目はほぼdepartamento de lujo。部屋というより、室内だけを切り出した商品名に近い。住所は「Masaryk徒歩圏」「Parque Lincoln近く」と短く添えられるが、通りの気配はそこから先へ入ってこない。
そのかわり、設備語の並びは妙に具体的だ。
320 m2, 3 recámaras, 3.5 baños, elevador directo al piso, 2 cajones, bodega, cuarto de servicio, vigilancia 24 hrs, CCTV. Mantenimiento: MXN 12,500.
注目すべきは、警備が最後ではなく、収納や使用人部屋と同じ列に置かれることだ。危険は説明されない。だが、指紋認証、二重扉、circuito cerradoが面積と同じ調子で積まれた瞬間、この部屋は住まいではなく管理メニューになる。
ところが「estilo europeo」という札をそのまま信じると外す。間取り図にはしばしばcuarto de servicioが残り、キッチン脇の細い動線が裏口へ抜けている。広告はイタリア製キッチンやオーク材を誇るのに、家事を引き受ける小部屋は消さない。ここがポランコのねじれである。ヨーロッパ風は完成形の名前ではない。メキシコシティの上層住宅が持つ古い骨格に、輸入語を上塗りするラベルだ。
価格表記も同じ働きをする。売価はペソで大きく、すぐ横に小さめの英語でUSDの換算が付く。さらに賃貸広告では「mantenimiento incluido / no incluido」が割り込み、月額管理費が家賃の見え方を変える。居住の説明より、資産の説明が先に立つ。住む人の一日ではなく、買う人の計算機に合わせた書式である。
ポランコの広告が売るのは静けさではない。遮断の段取りである。街路樹や公園名は入口だけを飾り、本文は室内写真、警備設備、管理費、ドル換算へまっすぐ進む。その順番に、この地区の高級住宅観が露骨に出る。都市の複雑さを消したのではない。玄関の外へ押しやり、月額と設備表に書き換えている。