お断りの100パターン(第二稿)
時間先送り、主語消去、縁のせい

ソノダマリ(マンションポエム国際比較調査員)

先週、大学時代のサークル後輩から LINE が来た。末尾にハートの絵文字、本文は「久しぶりにお茶でも」、プロフィール画像が証券マン風のスーツに変わっていた。三年ぶりの連絡がスーツで来るときは、九割が紹介型投資勧誘である。私は既読を十七時間放置して「バタバタしていてごめん、落ち着いたら連絡するね」と返した。バタバタしているのは予定ではなく、返信の構文だった。

仕事柄、お断り表現を集めている。百件ほど並べたところで分類が効きはじめた。

実装
時間先送り落ち着いたら/またの機会に来ない未来を担保
検討保留持ち帰ります/考えさせて持ち帰り廃棄
主語消去家族が/会社の方針で自分を盾の裏へ
謙遜擬態私には荷が重く卑下で拒否を包装
縁のせいご縁がなく/タイミングが運に責任転嫁
感謝先行光栄ですが/嬉しいのですが受諾顔で却下

面白いのは断られる側の挙動だ。後輩は十七時間後の私の曖昧な返信に、二分で「了解!落ち着いたらいつでも!」とハート付きで返してきた。彼も型を知っている。型で送り、型で受ける。この往復の速度は、互いに関係を終わらせない契約書に判を押している速度だ。内容はゼロでも、契約だけが更新される。

結婚の断り文句で最多の構成要素は「タイミング」だった。仕事のタイミング、家族のタイミング、気持ちのタイミング。断る側は時計を指さし、相手を悪者にしない。ところが投資勧誘と宗教勧誘への断りだけが、急に短くなる。「結構です」「興味ないです」で切れる。短く切れる相手は、関係を続けなくていい相手だ。お断りの文字数は、相手をどれだけ未来に残したいかの通貨として機能している。

百件を見ていて気になったのは、「行かない」と書いた人が一人もいなかったことだ。全員「行けない」。意志ではなく能力不足として申告する。自分で決めたのに、決めていない顔をする。この「けない」の一文字は、日本語の親切というより、断った責任を自分の外に置くための精巧な溝だ。私は明日も、たぶんその溝を使う。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。