熱田神宮の朝
——名古屋散歩 #2

ワタナベ

朝早く目が覚めた。理由はない。年を取ると早く起きる。それだけだ。

砂利

熱田神宮。まだ誰もいない。

砂利を踏む。自分の足音だけが聞こえる。ざっ、ざっ、ざっ。砂利の道は長い。本宮まで、ただ歩く。

木が高い。朝の光がまだ斜めで、参道の半分は影だ。空気が冷たい。冬ではない。朝だから冷たい。

神鶏

鶏がいる。

神鶏。境内を歩いている。堂々としている。人を怖がらない。こちらが避ける。

なぜ神社に鶏がいるのか、知らない。調べれば出てくるだろう。調べない。知らないまま見ている。それでいい。

手水舎

手水舎で手を洗う。水が冷たい。

左手、右手、口、左手。柄杓を立てて柄を流す。作法どおり。

昔は気にしなかった。ざっと濡らして終わりだった。退職してから、なぜか丁寧にやるようになった。時間があるからかもしれない。急いでいないからかもしれない。

水は冷たい。手が赤くなる。

信長塀

信長塀。織田信長が寄進した塀。

桶狭間の戦いの前に祈願して、勝ったお礼に奉納した。そう書いてある。何百年も前の話だ。

土と石灰と瓦を重ねた壁が、まだ立っている。雨にも地震にも戦争にも残った。

自分は65年しか生きていない。壁に負けている。壁のほうが先輩だ。

本宮

本宮に着いた。手を合わせる。

何を祈ったか。うまく言えない。祈りというほどのものでもない。手を合わせて、目を閉じて、少し黙った。それだけだ。

神様がいるかどうかは知らない。いてもいなくても、朝の静かな場所で目を閉じることに意味はある。たぶん。

きよめ餅

帰り道、きよめ餅を買う。

妻へのお土産。小さい箱。白い餅にこしあん。昔からある店だ。昔から同じ味だと思う。確かめようがないが、そう思う。

家に帰る。「お参りしてきた」と言う。妻は「あら」と言う。

何を祈ったかは言わない。妻も聞かない。

余白

砂利を踏む音。
鶏の声。
水の冷たさ。

何百年の壁。
何も言わない神様。
何も聞かない妻。

朝の神宮に、
説明のいるものは何もない。

このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。登場人物はフィクションです。