閉鎖の、駐車場(第二稿)
土地が売れて、マンションが建つまで

アリヨシケント(26歳・コインパーキングの保守員8年)

閉鎖日は、いつもの順で回った。鍵束のいちばん手前の鍵が、この駐車場の現金部の鍵だ。八年、毎朝この一本から手が伸びた。今日は集金のあと、機械を外して回収する。一本目で開ける扉が、今日でなくなる。

最後の集金を、いつもの流儀で量った。金庫を開けて、硬貨の偏りを見る。十円玉が朝の側に寄る駐車場だった。近くの工場の朝礼に間に合わせる車が、七時台に集まる。だが最後の金庫は、その朝の山が薄かった。閉鎖の貼り紙を読んだ常連が、もう先に離れ始めていた。軽い、ではなく、何枚ぶん軽いかが分かる。それが俺の量り方だ。

その常連は、毎朝七時過ぎに来る一台だった。月極でもないのに毎朝で、いつも精算は同じ。釣りの出ない百円玉ちょうどを、選別口で一度噛ませてから入れる癖があった。閉鎖の一週間、彼は車を停めずに窓だけ下げて、入口の貼り紙を読んでいた。読み終えて、走り去った。百円を噛ませる手の癖は知っているのに、明日どこに移るのかは知らない。保守員に分かるのは硬貨の入れ方までだ。

撤去は据えたのと逆の順でやる。現金部を空にし、制御の線を抜く。アンカーボルトはインパクトレンチで緩めた。四本のうち一本だけ錆びて頭が舐め、ねじ切るのに手間取った。精算機を吊り上げたあと、台座のコンクリートに、ボルト穴が四つ、口を開けて残った。精算機は整備して別の駐車場へ回す、と技術の人が言った。機械は引っ越す。引っ越し先までは、俺は聞かない。

ロック板を起こすと、その下のアスファルトだけが、八年前の色のまま四角く残っていた。日に焼けていない四角が、区画の数だけ並ぶ。看板を外した柱の根もとにも、同じ白さがあった。場所は、自分のいた跡を自分で残す。機械は持って行けても、跡は持って行けない。

機械をぜんぶ外すと、土地はただの地面に戻った。精算機もロック板も看板もない。白い四角と、四つのボルト穴と、台座のコンクリートだけ。さっきまで駐車場だったものに、もう名前がない。鍵束の手前の一本は、今日からどこも開けない。

その精算機は今ごろ、別の駐車場で硬貨を数えている。新しい場所の客層を、また硬貨の詰まり方で覚えていくのだろう。百円を噛ませる癖の客は、別のどこかの精算機に、同じ手で百円を入れているのかもしれない。会うことはない。場所はばらばらに引っ越して、俺だけが消えた駐車場の七時台を覚えている。

数か月後、巡回ルートでその角を通る。囲いの向こうで、マンションの基礎が組まれている。その角にさしかかると、右足が勝手に上がって、アクセルが緩んだ。停める車などもうない。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。