ソノダマリ(マンションポエム国際比較調査員)
白は無色ではない。 高級広告でいちばん事故を起こすのは白だ。金は派手でも成立するが、白は少し青ければ病院になり、少し黄に寄れば古びる。値段を上げたい企業ほど、この危うい色の扱いで正体が出る。
日本の高級分譲マンションの冊子を机に並べると、白は紙からして冷えている。A4よりひと回り細い判型、指に粉気の残るマット紙、ロゴは銀の箔押し。リビングのCGには人がいない。ソファのクッションは四角く、カーテンは風もないのに垂直で、白壁には額もスイッチの影も出さない。ここでの白は清潔というより、生活の擦れを未入居のまま封じるための白だ。
ところが上海で見た婚礼会場の広告は、主役のドレスが白でも、画面の端に朱の印のような四角を置き、見出しの下に細い金線を走らせていた。白だけでは祝いが立ち上がらないからだ。同じ都市の高級住宅のロビーCGでも、白い大理石は単独では出てこない。天井の間接照明を蜂蜜色に振り、真鍮の縁を一本入れ、受付台の背面に薄い琥珀の石を立てる。白は主役ではなく、付き添いを連れたときに値段を持つ。
西欧のブライダル広告は別の細工をする。白いドレスそのものより、袖のレースが落とす灰色の影、クリーム寄りの紙、曇天の窓光で浮く肌の赤みで格を作る。だから同じ白でも、病院のLEDに照らされたフラットな壁面はたちまち廉価に見える。白が上等に見える条件は明快だ。面積ではない。深さである。
白を比較してわかったのは、各地が好きな色の違いより、白を単独で立たせる勇気の差だ。日本の住宅広告は空室を磨き上げるために白を使い、中国の祝いの広告は白を必ず誰かに付き添わせ、西欧の婚礼広告は影を編み込んで白に厚みを与える。なのに東京の新築マンション名には「ブラン」や「白金」が増えつづける。画面の白は強くなる一方で、暮らしの白はそこまで信用されていない。この食い違いが、まだうまく説明できない。