FAX送り状の様式
「お手数ですが、ご確認ください」の手書き欄

ワタナベ(65歳、元会社員、名古屋在住)

私が会社勤めをしていた頃、日々の業務で欠かせないものがありました。それがFAXの送り状です。今ではめっきり見なくなりましたが、あの紙一枚には、当時の仕事の空気感が凝縮されていたようです。まだインターネットが今ほど普及していなかった時代、大切な書類のやり取りはもっぱらFAXでしたから。

どこの会社でもフォーマットは似通っていて、宛先、差出人、日付、そして件名。それに本文を記す欄が続き、最後に「枚数」という項目が設けられていました。この「枚数:〇枚(送り状含む)」という括弧書き、今思えば不思議な表現でした。わざわざ「送り状含む」と断りを入れるところに、どこか奥ゆかしい、そして几帳面な日本人の気質が表れていたのかもしれません。

そして、私が特に記憶に残っているのは、手書きで「お手数ですが、ご確認ください」と添える欄です。これはほとんど様式美に近いものでした。活字で印刷された定型文の中に、唯一、人の手が介在する部分。そこにどんな一言を添えるか、あるいは何も書かないか。それは、送る側の気持ちがほんの少しだけ透けて見える瞬間でもありました。些細なことですが、ここに手書きの一筆を加えることで、無機質な情報伝達に温かみが生まれる。そんな文化がありました。

なぜ「送り状含む」と書く必要があったのか。それは、受け取る側が枚数を数える際、送り状自体を除いてしまう間違いを防ぐためだったのでしょう。あるいは、枚数に齟齬があった場合に、「送り状も一枚と数えてくださいね」という予防線だったかもしれません。どちらにせよ、トラブルを未然に防ぎ、円滑なコミュニケーションを図ろうとする、細やかな配慮の現れでした。

あの手書き欄に、ある人は「いつもお世話になっております」と、またある人は「よろしくお願いいたします」と書き添えることがありました。時には、相手との関係性をうかがわせるような、少し砕けた一文があったりもして、それがまた人間味を感じさせたものです。

形式的な業務の中にも、人対人の繋がりを大切にする心が息づいていた

デジタル化が進んだ今、そうした「余白」が失われつつあるのは、少し寂しい気もします。

今や、ほとんどのやり取りはメールやクラウドサービスを通じて行われます。情報のスピードは格段に上がりましたが、そこにはかつてのFAXの送り状が持っていたような、ささやかな温かみや気遣いが入り込む余地は少なくなったように感じます。それは時代の流れであり、効率化の恩恵でもあります。しかし、あの手書きの「お手数ですが、ご確認ください」という言葉には、相手への敬意と、見えない「手間」へのねぎらいが確かに込められていた。一枚の紙が、人と人との間にある目に見えない繋がりを形にしていたのです。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。