ブライダルの、左手(第二稿)
指輪交換の一本のために、十本を組み直す仕事

フセアカリ(26歳・ネイリスト6年)

ブライダルの予約が入ると、まず式の日付を訊く。色でも形でもなく、日付だ。そこから逆算して、前日か前々日に入れる。それより前だと、当日までに角が一段くたびれる。ふだんは二十八日後を取る私が、ブライダルだけは一日か二日のために組む。

ふだんは十本を均等に見る。ブライダルは左手の薬指から設計する。指輪交換のあいだ、その一本だけが、その日いちばん多く見られる。式場のカメラも、参列者の手も、新郎の指も、そこに集まる。一本のために、残りの九本を抑える。薬指に淡いベージュの上から細い白の縦線を一本だけ引いて、先に小さなストーンを一粒置く。ほかの九本は線も粒もなく、無地にする。引いた九本が、引いた一本を立てる。

白系のグラデーションを多く使う。根元を透かして先へ白を濃くしていく。チップにするかジェルにするかは、当日とれるのが怖いかどうかで決まる。とれるのが怖い人にはジェルを乗せ、長さがほしい人にはチップを足す。どちらでも、薬指の縦線とストーンは最後に置く。乾く時間を最後に一本ぶん余らせておくためだ。

客はよく喋る人と、無言の人に分かれる。喋る人は、式場が、ドレスが、リハーサルがと、段取りを全部こぼしていく。私は相槌を打ちながら、手は薬指のフォルムにある。口は四週間先の式にいて、爪はいまの台にある。私はその二つを別々に聞いている。

無言の人は、甘皮に出ている。根元の皮膚が荒れて、人差し指の側面に噛み痕がある。それも、つい昨日今日の痕だ。私はその痕を覆わない。覆えない。色が乗るのは爪で、荒れた皮膚ではないからだ。プッシャーで甘皮を押し上げ、二四〇グリットで根元を整え、痕の上にオイルをすり込んで伏せる。ベースの白は、爪のほうにだけ乗せる。痕は、痕のまま、写らない角度に逃がす。

母親の分を一緒に、と言われることがある。母娘で並んで台に座り、二組の左手を続けて仕上げる。娘の薬指はこれから指輪が乗る指で、母の薬指には古い指輪が乗ったままだ。私はその指輪を外さず、際まで白を寄せる。同じ淡いベージュを、二つの薬指に塗る。

式の一か月後、同じ人がふつうのネイルに戻しに来る。「戻してください」と言う。私はマシンで白いグラデーションを削り、縦線を落とし、ストーンを外し、いつものベージュを乗せる。組んだものを、解いていく。戻しに来たときのほうが、客はよく喋る。写真がどうだった、母が泣いた、と。式のあいだ無言だった人ほど、よく喋る。緊張のほどけた指は、噛み痕も新しくない。

見られる十本と、誰にも見られない十本を、私は同じ二四〇グリットで整える。同じ手つきで、同じ番手で、同じ秒数だけ乾かす。次回予約は二十八日後。その人はまた、新しい四ミリを連れて戻ってくる。私はその四ミリを読んで、黙って、ベージュを乗せる。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。