入札の、見本(第二稿)
一年の海が一枚の値段になる日

ヘグリシオン(36歳・海苔漁師14年)

二月十九日、乾海苔の入札会だった。前夜は加工場で徹夜だった。摘んだ海苔を洗って刻み、水で薄めて簀に漉き、乾燥機に並べる。摘採からここまで一気にやらないと色が抜けるので、加工は夜にしかできない。乾燥機が回ると湿った磯の匂いが熱で香ばしさに変わり、朝五時、機械の口から黒い板になって出てきた。これを箱に詰めて、会場に持っていく。

会場に出す前に、自分の海苔を自分で格付けする。一年ぶんを等級ごとに分け、各等級の箱から十枚を抜いて一帖の見本にする。その一帖が、後ろに積んだ箱の全量を代表する。濃く黒いものは上の箱、薄く緑がかったものは下の箱。今年のうちは、上にできた箱が少なかった。見本を抜く指で、その冬の出来がもう分かる。

会場は漁協の土間だ。長机に番号を振った見本が並ぶ。問屋の検査員が回ってきて、私の見本の一帖を窓の光にかざし、ライターで端を炙り、そこをちぎって噛んだ。炙ると上等の海苔は緑が立つ。私の海苔は、立ちかけて、すぐ茶に戻った。検査員は噛んで、口の動きを一度止め、何も言わずに次の机へ移った。値踏みにかけた時間は、五秒もなかった。

昼過ぎ、壁に細長い紙が貼り出された。番号と金額の列だ。私の番号は四十一番。一帖二千八百円。前年の同じ等級が三千六百円だったから、八百円下げた。隣の家の番号は三十八番、三千五百円で並んでいた。壁の前で目が合い、どちらからともなく頭を下げた。負けた相手に下げる頭は、いつまでたっても慣れない。

会が終わって、私は三十八番の見本を見に行った。まだ机に残っていた一帖を一枚抜いて、口に入れた。私のより黒く、薄い。違いは口どけだった。私の海苔は舌の上に紙の縁が残るのに、三十八番はその縁が立たずに溶けた。色でも艶でもない。最後のひと息、溶け際で負けていた。乾燥機の温度を上げすぎて、縁を焼いた夜が三度あった。あの三度だ。

浜には共同の乾燥場がある。祖父は簀を地面に並べ、天日で板を干していた。父は一軒に一台の乾燥機を買い、私の代でその機械を何軒かで共同にした。今朝、私はその共同の機械から出た板を重ね、上から数えて十枚目までを指で挟み、揃えて一帖にした。祖父がどう抜いたかは知らない。私はこう抜く。揃わない縁を二度叩いて、箱に入れた。

一番海苔、という。その年いちばん最初に摘んだ海苔だ。柔らかく香りが高く、四十一番の私でも、初摘みの一帖だけは六千円が付いた年がある。一番海苔に高値が付くと、その金額を父に電話で言う。今年は付かなかったので、電話はしなかった。来年の四十一番に何を直すか、八百円の差と、溶け際の縁と、焼いた三度の夜を、私はもう数えはじめている。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。