夕方、引き取りに来る軽トラ(第二稿)
直売所一年目、棚の采配を覚えるまで

ホリグチサヤ(44歳・道の駅直売所スタッフ15年)

うちの直売所は委託販売だ。値段シールも、袋の口を留めるテープも、生産者が貼って持ち込む。レジを打ち、バーコードシールを精算書と突き合わせ、棚を整える。何を幾らで売るかは、私が決めない。私が決めるのは、誰の野菜をどの棚に置くか。それだけだ。

委託だから、売れ残りは店のものにならない。閉店前、生産者が軽トラで来て、自分の棚に残ったものを箱に戻して持ち帰る。それだけの決まりだ。見切りで安くするときは、閉店一時間前に生産者へ電話して許可を取る。私の一存では一円も下げられない。

一年目の春、初めて閉店前の駐車場に立った。来る軽トラと、来ない軽トラがあった。すぐに分かった。売れた棚の生産者は、来ない。来る必要がないからだ。駐車場に入ってくるのは、売れ残った棚の生産者だけ。誰が今日売れて、誰が売れなかったかが、停まった軽トラの台数だけ、外から見える。

その日、一人の生産者が自分の棚の前にいた。朝、いちばん早く搬入の順番待ちに並んでいた人だ。キュウリ三袋とサニーレタス二袋が残っていた。キュウリは五本入りで百二十円、レタスは一袋百円。自分で貼った値段シールの袋を、自分でコンテナに戻していく。テープも、シールも、その人の手のものだ。それを、その人の手が回収する。

私は値段を下げられない。袋詰めもしない。棚の位置を決めるだけの人間だ。だからその五袋を、伝票どおり、ただ記録した。引き取り、と。

次の朝、同じ生産者のキュウリを、目の高さの棚に置いた。前の日まで一番下の段にあった。目の高さの棚は売れて、しゃがまないと取れない下の段は、同じ野菜でも残る。情けでも実力でもない。高さの問題だ。その日、キュウリは昼前に売り切れた。引き取りの軽トラに、その人の車はなかった。

規格外品コーナーの曲がったナスがいつ動くか、雨の日に何が残るか、目の高さの一段が一日をどう変えるか。毎朝、誰のシールをどの段に置くかを配り直す。それが、決まりの中で私に許された唯一の手だ。

十五年、数え切れない伝票を突き合わせてきた。売れた数は覚えていない。覚えているのは、夕方の駐車場に停まった軽トラの台数のほうだ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。