ナカジマサチ(44歳・女性・地方都市在住。二十数年前のデビュー時からのファン。「推し」という語が無かった頃からの一人)
あの子たちのデビューは、私にとって人生の新しい章の始まりだった。二十数年という歳月を、私は彼らのチケットの当落で数えてきた。ファンクラブ先行抽選のメールが届くたび、胸がきゅっと締め付けられる。あの独特の緊張感は、家族のイベントや仕事とはまた違う、私だけの聖域。結果が「当選」ならば歓喜に震え、「落選」ならば深いため息と共に現実を受け入れる。その繰り返しが、いつしか私の日常の構造そのものになっていた。
十周年のドーム公演の報せを聞いた時、私は産後の混乱の中にいた。幼い長女を抱え、夜中の授乳に疲れ果てていた日々。それでも、「応募しない」選択肢はなかった。結果はあっけないほど「落選」。正直、ほっとした気持ちも少しあった。当選したところで、小さな命を抱え遠征する体力も気力も、当時の私にはなかっただろう。テレビで流れるライブ映像を、ぼんやり眺めながら、手の届かない輝きに憧れる夜を過ごした。
結婚、出産、育児。人生の大きな節目を経験するたび、彼らの存在は常に傍らにあった。子どもの発熱で断念した地方公演、夫の海外出張と重なり泣く泣く手放したアリーナ席。私の「当落」は、ただのチケット結果ではなかった。それは、日々の生活の中で何を優先し、何を諦めるかの選択を突きつけられる、小さな試練のようでもあった。それでも、彼らの音楽が途切れることはなく、私の心の支えであり続けた。
二十周年の全国ツアーで、ようやく「当選」の文字を見た時の喜びは、忘れられない。待望の機会。数年前に訪れた突然の活動休止は、私の中に大きな影を落としていた。まるで、約束されていたアンコールを、誰かに奪われたかのような喪失感。ステージに立つ彼らの姿は、輝きを増しているように見えたが、心のどこかで、あの頃のような無邪気な喜びだけでは受け止めきれない何かがあった。
そして今回、彼らの解散が発表された。あまりにも突然の出来事に、言葉を失う。これまでの「当落」は、私を彼らの世界に招き入れるかを決めるものだった。しかし、この最後の公演ばかりは、誰もが平等に「当選」してしまう。なんとも皮肉な巡り合わせ。二十年分の思い出が胸に去来するが、その結びつきが断ち切られることに、涙よりも先に、深い諦めのような感情が湧き上がる。
今度ばかりは全員当選らしい。こんな当たりくじ、引きたくなかった。
私の人生の傍らに常にあった、輝く五つの星。その光が完全に消えてしまう日が来るなんて、信じたくない。だが、これが現実。静かに、しかし確実に、私の二十年が終わろうとしている。
——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。