樽に入れる、昆布(第二稿)
蔵と蔵の取引、樽の底に沈む仕事

コゴメタツヤ(53歳・漬物職人31年)

うちのたくあんには、刻み昆布が入っている。ぬかと塩のあいだに、二分(ぶ)に刻んだ昆布を散らす。代々そうしてきた。食べた客のほとんどは気づかない。気づかないまま、たくあんの甘みが昆布のぶんだけ深い。樽の底に沈んで、誰の目にも触れずに置かれる仕事だ。

その昆布を、北の浜の問屋から三十年送ってもらってきた。先代の親方の代から、毎年十一月に二十貫が届く。今年、伝票の宛名の判が変わった。代替わりしたと聞いて、挨拶に伺った。継いだのは、私と一つ違いの人だという。

蔵の戸を開けて出てきたのが、ニノヘアオイさんだった。五十四歳、昆布問屋を三十二年。名刺を交わし、奥の帳場で向き合った。ニノヘさんはまず去年の伝票を出してきた。二十貫、一貫いくら、十一月の納め。「先代と同じで」と私が言うと、「同じで」と返された。商いの話は、それで半分済んだ。

漬物に入れる昆布は、出汁用とは選びが違う。出汁用は、煮て旨みが出る昆布を取る。私が欲しいのは、煮ないで、樽の中で半年かけて漬かる昆布だ。粘りと、厚み。粘りがあれば、刻んでもたくあんの水を抱いて甘みをにじませる。厚みがあれば、半年の仕込みでも溶けきらず、最後まで仕事を続ける。ニノヘさんは私が条件を言う前に、漬物用を三枚、束から抜いて並べた。

蔵囲いを見ていけと言われた。床は簀の子で、その下が土だった。昆布の表に白い粉が吹いていて、束を持つと指についた。私の蔵で樽の蓋を持てば、手は水で湿る。ここでは、手は乾いて、白くなる。同じ「寝かせる」でも、こちらは水を抜き続け、私のところは水を上げ続ける。逆の方向に時間を使っている。

束の前で立ち話になった。ニノヘさんは、ここで昆布を二年寝かせ、ものによっては三年置くと言った。私は、樽を半年寝かせると言った。ニノヘさんが「半年は早いね」と言い、私が「二年は気が長い」と返した。二人とも、寝かせた年数に値をつけて飯を食っている。そのことは、口にしなかった。

帰りぎわ、ニノヘさんが一束を抜いて寄越した。この浜の二年物で、例年送っているものより一年長い。一貫あたり、いつもの三割増し。「次の仕込みで、一樽だけ試しては」と言う。粘りが一段深い、と。私はその一束を持ち帰ることにした。二十貫のうちの一束。残りは、例年どおりにする。

蔵に戻って、刻んでみた。刃に重く残る。指で揉むと、糸を引いた。これを一樽の底に散らして石を載せた。半年後、どんな甘みがたくあんに置かれるのか、まだ分からない。分からないから、一樽だけ試す。食べる客は、やはり気づかないだろう。気づかれない樽の底で、北の蔵の二年と、私の蔵の半年が、初めて重なっている。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。