Wait, They Named It WHAT?
——英語ネイティブが見た日本のマンションブランド名

ソノダマリ・ヨコヤマサトシ・マーク

今回から新しい調査員が加わる。マーク——アメリカ人。かつて名古屋でヨコヤマサトシとルームシェアしていた旧友だ。当時はALT(外国語指導助手)として小中学校で英語を教えていたが、今はアメリカに戻り、某有名企業のexecutiveをしている。

マークがこのプロジェクトに参加するきっかけになったのは、ルームシェア時代のある出来事だった。

発端——「プラウド事件」

ヨコヤマ

あれは確か、二人で家に帰る途中だったよね。駅にマンションの広告が貼ってあって。

マーク

Yeah. 大きなポスターに "PROUD" って書いてあった。僕は最初、何かの motivational poster かと思ったんだよ。"Be proud of yourself" 的な。

ヨコヤマ

「いや、これマンションの名前だよ」って言ったら——

マーク

Wait, they named a building "Proud"? 建物が proud? 何に対して proud なの? 自分自身に? って言って、二人で大笑いした。

マーク

英語で "proud" は形容詞でしょ。名詞じゃない。"I'm proud" とは言うけど、建物の名前にはしない。しかも "proud" にはちょっと "arrogant" なニュアンスもあるんだ。自慢げ、とか、うぬぼれ、とか。A proud building って言ったら、「自惚れた建物」みたいに聞こえる。

ソノダ

……でも日本では大人気ブランドですよ。認知度37%で業界2位。

マーク

That's the thing. 日本では「誇り」のポジティブな面だけが切り取られてる。ネガティブなニュアンスは completely lost in translation なんだよ。

マークの耳で聴く——日本のマンションブランド名

一つずつ検証してみよう

マークにお願いして、日本の主要マンションブランド名を英語ネイティブの耳で検証してもらった。

プラウド(PROUD)——野村不動産

マーク

さっき言った通り。英語では建物の名前にしない単語。"Proud Tower" って言ったら、バーバラ・タックマンの歴史書『The Proud Tower』(1966年)を思い出す人もいるかも。あれは第一次世界大戦前の傲慢な社会を描いた本で、つまり "proud" には「傲慢さゆえに破滅する」含みもある。

ブリリア(Brillia)——東京建物

マーク

This one is interesting. "Brillia" は英語に存在しない単語。"Brilliant" から作った造語だろうけど、英語話者にはイタリア語かスペイン語に聞こえる。-ia の語尾は地名っぽい。"Brillia" ——どこかの国の名前みたい。悪くはないけど、意味が空っぽ。

パークコート(Park Court)——三井不動産

マーク

Oh, this one actually works. "Park Court" は英語として完全に自然。イギリスにも Park Court っていうアパートメントはたくさんある。公園に面した格調ある住まい、というイメージが正確に伝わる。これを名付けた人は、ちゃんと英語がわかってたね。

グランドメゾン(Grand Maison)——積水ハウス

マーク

Wait——これは英語じゃなくてフランス語だよね? "Grand" は英語でも使うけど、"Maison" はフランス語の「家」。英語話者には "Grand Mason"(偉大な石工)に聞こえる可能性がある。フリーメイソンの親戚かと。

ソノダ

(笑)それは新しい視点ですね。

シエリア(Cielia)——関電不動産開発

マーク

…What language is this supposed to be? ラテン語? イタリア語? "Ciel" はフランス語で「空」だから、そこから来てるのかな。でも "Cielia" は何語でもない。Japanese original だね。

ライオンズマンション——大京

マーク

OK this is the big one. まず "mansion" 自体が日本独自の使い方でしょ。英語の "mansion" はものすごく大きな一軒家のこと。"Lion's Mansion" って英語で言ったら、ライオンが住んでる豪邸だよ。サファリパークの施設名みたいだ。認知度52%で1位なんだっけ? Amazing.

Meanwhile in America——アメリカの命名法

Location, Location, Location

ソノダ

マーク、アメリカのcondoはどういう名前をつけるんですか?

マーク

アメリカ、特にニューヨークでは、基本は住所がそのまま名前になる。432 Park Avenue. One57. 15 Central Park West. 数字+通りの名前。それだけ。

ソノダ

ポエムがない!

マーク

Exactly. アメリカのluxury condoでは、住所自体がブランドなんだ。"Park Avenue" と言えば全員がわかる。"432 Park Avenue" の "432" は番地だけど、超高層タワーが番地で呼ばれること自体がステータスになる。日本の「プラウド南麻布」みたいに形容詞をつける必要がない。

ヨコヤマ

住所の権威だけで売れるってことか。

マーク

そう。ただし、住所にブランド力がない場所では "The" を使うパターンがある。"The Chelsea." "The Dakota." 定冠詞 "The" をつけると、唯一の存在になる。これは日本の "NAGOYA the TOWER" と同じ発想だね。

ニューヨーク・サン紙の記事によれば、新しいコンドミニアムの命名は「高度に競争的で、デモグラフィクス重視の、ブランド志向のエクササイズ」であり、「開発プロジェクトのマーケティング全体が、一つのシンプルなディテール——建物の名前——から始まる」という。

日本:「プラウド覚王山」= 形容詞(品質)+ 地名
アメリカ:"432 Park Avenue" = 番地 + 通りの名前
韓国:「래미안 원펜타스」= ブランド名 + サブネーム

日本は品質を形容詞で付加し、アメリカは住所の権威に委ね、韓国はブランド体系の中に位置づける。三者三様の「名前の文法」がある。

Forest Hills Revisited——アメリカの「地名ポエム」

森もないし丘もない

ソノダ

#1で少し触れましたけど、アメリカの住宅開発地名にもポエムはありますよね。Forest Hillsに森がない話。

マーク

Oh yeah, that's our version of マンションポエム。Subdivision(住宅開発地)の命名は完全にファンタジーだよ。Forest Hills——森も丘もない。Lake Meadow——湖も草原もない。Highland Park——高地も公園もない。開発で木を全部切り倒してから "Oak" をつけるのはアメリカのお家芸だ。

マーク

ある調査によると、subdivision nameで最も多い単語は "Creek"(小川)、"Oak"(樫の木)、"Meadow"(草原)。つまり開発によって失われた自然を、名前で呼び戻しているんだ。

ヨコヤマ

日本のマンションポエムで「杜」や「緑」が頻出するのと同じ構造じゃないか。

マーク

Exactly the same. 切り倒した木に「杜」と名づけるか、"Oak Ridge" と名づけるかの違い。言語は違っても、不動産広告が自然を消費してから自然を名前で復元するという構造は universal なんだよ。

和製英語の力——Brilliaは英語じゃなくていい

意味が空っぽだからこそ機能する

マーク

ここまで散々ツッコんできたけど、一つ認めなきゃいけないことがある。日本のマンションブランド名は、英語として正しくなくても、マーケティングとしては正しいんだ。

ソノダ

というと?

マーク

"Brillia" は英語に存在しないけど、だからこそ意味のバイアスがない。日本の消費者は "Brillia" を聞いて "brilliant" の輝きを感じつつ、英語のネガティブなニュアンス("too brilliant" = まぶしすぎる、目立ちすぎる)には触れない。

マーク

"Proud" も同じ。英語の "proud" が持つ "arrogant" の影は、日本語の「プラウド」には存在しない。カタカナに変換された瞬間に、ネガティブな半分が蒸発する。これは和製英語の最大の強みだと思う。

ヨコヤマ

翻訳で失われるのは意味だけじゃなくて、ネガティブな含みも失われる、と。

マーク

Right. Lost in translation works both ways. アメリカで建物に "Proud" と名付けたら炎上する可能性がある。でも日本では "プラウド" は純粋に「誇り」。これは欠陥じゃなくて feature だよ。

まとめ——言葉は国境を越えるとき、変身する

マークの参加で見えてきたのは、マンションブランド名における言語のフィルター効果だ。

マーク

Next time, アメリカの luxury condo の広告コピーを本格的に見てみたいね。ニューヨークの "Billionaires' Row" の物件とか。日本のマンションポエムとは全然違うアプローチだから。

ソノダ

楽しみにしてます。

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参考文献

英語記事

日本語記事

このページの対話は懇親会での会話を音声文字起こしし、AI(ChatGPT)が構成・編集したものです。