※本エッセイおよび本レビューはすべて創作です。登場人物・学校・出来事はすべて架空のものであり、実在のいかなる個人・組織とも関係ありません。
本稿はミウラ編第一稿への外科的指摘。1学年上の「外側からの観察者」を主役にする難しさは、内側の人物(タケウチ)と同じ深度の自意識を持たせると視点が崩れる点にある。
第一稿は「5分/45分」の対比、「誰も手を残さなかったクラス」、「気合い=輝け☆青春」の発見、後輩との「右足」の所作、という4つの良点を持つ。一方で、ミウラの「気づき」が早すぎる、「困る」という抽象語が乱発される、最終段の宣言調が17歳らしくない、という3点で改稿が要る。
強み
弱点
第3章「誰も『困る』を引き受けなかった」、第7章「キョウタが何に困ってるか」、第8章「誰も困らなかった」「明日から困りたい」。「困る」が論文用語のように繰り返される。
処方:「困る」を3回までに減らす。残すのは第3章の「誰も困るを引き受けなかった」と最終段の1回程度。第7章は「気合いじゃ何も変わらない」程度に置き換える。第8章も「考えてなかった」「ぼーっとしてた」など、ミウラの語彙圏に戻す。
第3章「『輝け☆青春』を出されたら、何も言わずに賛成してたな。5分で決めたのは、効率がいいんじゃなくて、誰も『困る』を引き受けなかったからかもしれない」。
ミウラは1年3組を覗いた直後(数時間後)にここまで構造的な気づきに到達している。これは作者の声であって、ミウラの声ではない。気づきは数日後の部活の「右足」のあとに置くべき。寝る前のミウラは、まだ「あいつら何揉めてんの、マジな顔して」程度のもやもやで止めるべき。
処方:第3章のミウラの内省を、構造的な分析から「もやもや」に弱める。「あいつら、なんでマジな顔してたんだろう」「俺だったら、考える前に賛成してた気がする」程度。気づきは右足のあとまで遅らせる。
第4章「うちの貼り紙には、誰の手も残ってない」「『輝け☆青春』で、何も困らなかったクラス。困らなかったから、誰の手も残らなかった」。
「手の形が残る/残らない」という比喩、ミウラが前日の準備の場で気づくには早い。これも構造の言語化が先行している。ミウラはこの時点でまだ「明朝体きれいだな」と思っているくらいでいい。
処方:第4章のinfo-boxは削る。本文も「明朝体、プロっぽい」「でも、なんか味気ない、ような」程度の感触に止める。「手の形」「困らなかったから残らない」は最終章まで取っておく。
第7章「『気合い』って、『輝け☆青春』と同じ構造をしてる。テンションは高い、でも中身がない、でも誰も困らない」。
「同じ構造をしてる」という言い方、ミウラの語彙ではない。彼は構造分析の人ではなく、身体の人として書かれている(バスケ、右足、呼び込みの大声)。気づきは「同じ構造」ではなく「同じ感じ」「同じやつ」程度の感触で書くべき。
処方:「『気合い』って、『輝け☆青春』と同じ構造をしてる」を、「『気合いだ気合い』、なんか聞き覚えあるな、と思ったら、自分のクラスのスローガンと同じ感じだった」程度に砕く。「テンションは高い、でも中身がない、でも誰も困らない」の3点列挙は削る。タケウチが書く文章になっている。
最終段「俺は、明日から困りたい」。
これは決意表明として強すぎる。ミウラの他作(特定はないが、人物像として)は「気づいたけど、すぐ忘れそう」のリアリティを持つほうがエモい。決意で締めると、読後感がエッセイ的優等生に寄ってしまう。
処方:「俺は、明日から困りたい」を「次は俺も、ちゃんと困ってみるか」程度に弱める。あるいは、「明日からは無理かもしれない。でも、次のスローガンが回ってきたら、5分で賛成しないかもしれない。たぶん」程度に「たぶん」を残す。タケウチの過去作の「たぶん」を引き継ぐ。
第9章「覚えてる人がいて、忘れる人がいて、外から覗いた俺がいて、それで45分は完成する」。
ミウラが自分を「45分の完成要素」として位置づけるのは、外野の自己昇格として効きすぎる。覗いただけの人間が、勝手に自分を物語に組み込むのは、ちょっとずるい。読者がそう思える余地は残しても、本人がそう書くのはやりすぎ。
処方:「外から覗いた俺がいて、それで45分は完成する」を削る。「覚えてる人がいて、忘れる人がいて、それでスローガンってのは終わるんだな」程度で止める。ミウラは外野のままにする。それが正しい立ち位置。
削る:第3章の構造的気づき、第4章のinfo-box(手の形)、第7章「同じ構造/3点列挙」、第8章の「困る」連発、第9章「外から覗いた俺がいて完成する」、最終段の宣言調。
足す:第3章のもやもや感、第7章の「同じ感じ」程度の感触、最終段の「たぶん」。
保つ:5分/45分の対比、明朝体A3×4枚 vs 模造紙、たこ焼きを買う場面のタケウチとの「あ」、右足の所作、キョウタが3組だったオチ。
タイトルは『「輝け☆青春」で、何も困らなかった——文化祭、ミウラの六日』に微修正。「クラス」を落としてリズムを軽く。
レビュアー・横山研編集部(ソノダマリ+キリシマミサキ+ハヤシアヤカの連名)