未明の、通路(第二稿)
終電後の地下街、人のいない街を歩いて始発までを過ごす数時間

モロボシリク(47歳・地下街の施設管理25年)

終電が出ると、地下街は照明を半分に落とす。営業中は両側の列が点く天井灯が、片側だけになる。明るくも暗くもない、その半分の光の中を、私は最初の巡回に出る。昼間の人いきれが引いたあとの通路で、聞こえるのは自分の足音だけだ。地下街の夜は、ここから始まる。

まずシャッターを確かめる。防災センターの盤で全店舗の施錠灯を見て、それから歩いて回る。盤が緑でも、歩く。盤は錠の信号を見ているだけで、半端に止まったシャッターを見てはいないからだ。九十六枚あるうち、年に二、三枚、底まで下りていない一枚に当たる。先月は地下二階の総菜屋で、床から十センチ浮いて止まっていた。閉店の従業員が荷を出した拍子に途中で止め、気づかず帰ったのだ。私は店の緊急連絡先に電話を入れ、下りるまでその場で待った。

清掃がポリッシャーをかけ始める。昼は人の足が絶えないから、床磨きは終電後にしかできない作業だ。回転ブラシの音は、磨く床が乾いているか濡れているかで変わる。乾いた床では高く、洗剤の水を撒いたあとは籠もって低くなる。私はその音の遠さで、業者がいま地下何階のどこにいるか分かる。中央通路でかけていれば、音はC階段の踊り場まで届く。今夜は地下一階の東を磨いていて、私は西の裏動線へ抜けた。

エスカレーターを一基ずつ止める。動いている機械は直せない。整備の者が来て、覆いの鋼板を外し、踏段の鎖に給油する。昼間あれほど人を運んでいたものが、覆いを外すと、ただの鎖と歯車になって露わになる。私は脇のブレーキ盤の前に立ち、再起動の手順書を開いておく。点検の終わった一基を、低速で空運転させて鎖の鳴りを聞く。鳴りが消えれば、給油が回った合図だ。

裏動線は、客のいる昼には歩けない。非常口の点検は、この数時間にしかできない。私は懐中電灯で、普段は誰も通らない壁づたいの通路を歩く。緑の誘導灯が点いているか、非常扉の押し棒が一度で開くか。B出入口の裏扉は蝶番が湿気で重く、開けるとき毎度きしむ。きしまない夜は、誰かが先に油を差したか、それとも蝶番がいよいよ固まったか、どちらかだ。私は押し棒に体重をかけ、きしみを一つ確かめてから次へ進む。

夜間搬入の台車が、磨いたばかりの床を通る。昼は客で通れない中央通路を、未明には納品が行き来する。総菜屋の台車は二時、酒屋は三時、と時間が割ってある。割らないと、幅一・八メートルの通路で台車が二台はすれ違えない。私は搬入口に立ち、来た順を控えに書き、すれ違う二台を柱の窪みで待たせる。積み荷の重い台車は、磨いた床に車輪の細い筋を残していく。その筋は、始発までに乾いて消える。

四時半、シャッターを開ける順番が来る。一番に開けるのは地下二階の北、地下鉄連絡口に面した二十枚だ。一番乗りの通勤客は、地下鉄から上がってこの通路を西へ抜ける。だから西へ抜ける列から開ける。順番は、客の足の向きが決めている。盤の前で連絡口の改札が動き出すのを待ち、最初の足音が磨いた床に響いたら、私は照明を両側に戻す。半分の光が、両側の光になる。

足音は一人から始まり、五分で数人になる。私は最後にA出入口の鋼板の蓋を踏んで、その下の止水板の溝が塞がっているのを足裏で確かめる。雨の心配のない夜でも、そこを踏んでから上がる。これで二十五年、未明の通路を二千回は歩いた。回数は数えていない。覚えているのは、底まで下りていなかったシャッターの枚数のほうだ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。