未明の、通路
終電後の地下街、人のいない街を歩いて始発までを過ごす数時間

モロボシリク(47歳・地下街の施設管理25年)

終電が出てしまうと、地下街は別の街になる。昼間の人いきれが嘘のように引いて、通路には自分の足音だけが残る。眠る街の番人になって二十五年、私はこの静けさの中で夜を過ごしてきた。空の見えない場所の、空の見えない夜だ。

まず、シャッターの確認に回る。全店舗の施錠を、防災センターの盤で見て、それから実際に歩いて確かめる。何十枚というシャッターが下りていて、私はその一枚一枚の前で立ち止まる。たいていは下りている。だが時々、半端に止まっている一枚があって、そういう日は店に電話を入れることになるのだろうと思う。

清掃の業者が、床にポリッシャーをかけ始める。回転するブラシが石の床を磨く、低い唸りのような音が、誰もいない通路に響く。昼間は人の足が絶えないから、この作業は夜にしかできない。音は通路を伝って、ずいぶん遠くまで届いていたように思う。人のいない街に、機械の音だけが満ちていた。

エスカレーターを止める。整備の人が来て、点検と給油をする。動いている機械は直せない。止めて、覆いを外して、中の鎖や歯車に触れる。昼間あれほど人を運んでいたものが、夜は裸の機械になって横たわっている。私はその脇に立って、整備が終わるのを待っていたのだと思う。

誘導灯と非常口の点検は、人のいない時間にしかできない。客のいる昼に裏動線を歩き回るわけにはいかないからだ。普段は誰も通らない裏の通路を、私は懐中電灯で照らしながら歩く。緑の誘導灯が点いているか、非常扉が開くか。一つずつ確かめていく、誰も見ていない仕事だ。静かな夜の中で、私はこの裏の街を歩いていた。

夜間搬入の台車が、通路を通る。昼間は客で通れない通路を、未明には納品の台車が行き来する。店ごとに搬入の時間が決まっていて、台車が鉢合わせしないよう、私は立ち会って通路の段取りをする。荷を積んだ台車の車輪が、磨いたばかりの床を鳴らしていく。その音もまた、夜の通路の音だった。

未明の通路は、照明が半分だけ点いている。営業中の半分の明るさで、列の片方だけが灯り、もう片方は消えている。明るくも暗くもない、その半分の光の中を、私は巡回し続ける。眠る街を、私が一人で起こさないように歩いている。半分の照明は、夜の地下街のいちばん静かな顔なのかもしれない。

始発が近づくと、シャッターを開ける順番がある。通勤客が最初に通る動線から開けていく。一番乗りの足音が、磨いたばかりの床に響く。その音を聞くと、夜が終わったのだと分かる。誰もいない時間が、地下街を支えているのだ。人の歩く昼間のために、人のいない夜があって、私はその数時間を預かってきた。空を見られないこの仕事が、私をいまの私にしてくれたのだと思う。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

辛口レビュー →
第二稿(改稿版)→
← シリーズ目次に戻る

このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。