タケウチソウタ(16歳、高校2年)
VALORANTの試合終了画面。爆音が消え、銃声もアビリティーの爆発も止んだ。五人の見慣れないチームメイトと、見知らぬ敵。ヘッドショットで砕けた敵の頭が小さく揺れるリプレイ映像が流れ、その裏で、五人のエージェントが棒立ちするロード画面が切り替わるのを待つ。そこに三秒にも満たない沈黙が訪れる。そのあと、チャット欄がゆっくりと、不規則に動き出す。
負けた試合、チームはバラバラだった。VCでは誰も喋らない。終盤のミスを咎めるようなメッセージがチャットログに残る。息苦しい空気の中、僕は指先で「乙」と打った。それは誰に向けた言葉だったのか、自分でもよく分からない。味方からは何も来ない。相手からは事務的に「gg」とだけ。画面の右下には、敗北を告げる無機質な文字が光っている。まるでその二文字が、僕自身の惨めさを映しているようだった。
別の日、海外サーバーでのマッチ。互いに惜しいラウンドを何度も取り合った接戦だった。最終ラウンド、僕が劇的なクラッチを決めて勝利した。チャットは「GG」「NT」で埋め尽くされ、歓声にも似た定型文が飛び交う。僕は「乙」と打ちたかった。日本人としての慣習が、指を動かそうとする。だが、異国のプレイヤーたちにこの二文字が通じるのか。奇妙な躊躇が、キーボードを打つ指を止めた。結局、「gg」とだけ返した。相手が英語圏だと、とっさに日本語の礼儀が出ないのだ。
これらの二文字は、果たして本当に「お疲れ様」なのか、「良い試合だった」のか。あるいは、ただその場をやり過ごすためだけの、機能的な挨拶なのか。画面の向こうにいる相手の顔は、声は、感情は一切分からない。僕たちはただ、記号を交換しているに過ぎない。その行為は、薄い膜一枚隔てただけの、奇妙な遠慮に満ちている。オンラインゲームの終わりには、いつもこの無人地帯が広がる。
その遠慮の正体を、僕はまだ掴めない。それは礼儀なのか、照れ隠しなのか。だが、その距離感が、もしかしたら僕らを繋ぎ止めているのかもしれない。