コアの、縞
入社一年目、地面の下の観察者になるまで

サワタリミオ(37歳・地質調査のボーリング技士15年)

私の仕事は、地面に細い穴を空けて、その中身を細長い円柱で抜き取ることだ。コアと呼ぶ。建物が建つ前の土地から、誰も見たことのない深さの土を、最初に手に取る。十五年、それを続けてきた。

はじまりは二〇一一年、二十二歳でこの会社に入った年の、住宅地の小さな調査だった。やぐらを組み、ロッドという鉄の管を地面に押し込んでいく。深くなるほど管の本数が増える。一本、また一本と継ぎ足すたびに、自分が地面のどこまで降りているのかが、手の感触でわかった。大地は静かに、私を受け入れてくれているようだった。

抜き上がったコアを、先輩が長い箱に順に並べていく。上から下へ、浅いほうから深いほうへ。並べ終わった箱を見て、私は息を呑んだと思う。茶色のローム、その下に灰色の粘土、さらに下に砂、そして角の丸い礫。色も手触りも、変わり目ではっきりと切り替わっていた。縞、としか言いようがなかった。

先輩は箱を指して言った。「コアは土地の履歴書だ。何万年分の縞を、俺らが最初に読む」。その言葉が、なぜか胸に深く刺さった。地面の下には、こんなにも長い時間が、誰にも見られないまま積み重なっていたのだ。

調査では、地盤の硬さも測る。標準貫入試験という。決まった重さのハンマーを決まった高さから落として、サンプラーが三十センチ入るまでの打撃回数を数える。これをN値と呼ぶ。数が大きいほど硬い。砂の層でカンッ、カンッと小気味よく数が伸びるかと思えば、粘土の層では十回打ってもずぶずぶと沈んでいくこともあったと思う。地面は、見た目より正直だった。

穴の中には、水もある。掘っている途中で、ある深さから下が濡れてくる。翌朝、穴をのぞくと、水がある高さまで静かに溜まっている。地下水位だ。その水面が、地面の下の見えない世界の、もうひとつの地図なのだと、なんだか不思議な気持ちで眺めていた。

並べ終えたコア箱は、写真に撮る。スケールを添えて、縞が消えてしまう前に記録する。土はやがて乾き、崩れ、ただの泥に戻る。だから写真と箱が、その土地がたしかにそうであったという、唯一の証拠になる。私は地層の証人なのだと、シャッターを切りながら思った。

その住宅地では、地表近くにとても軟らかい層が見つかった。N値が一桁の、軟弱地盤。建てる側にとっては嬉しくない報告だ。先輩は数字を並べ、余計な脚色を一切せずに、ただ「ここは沈む可能性があります」と施主に伝えた。私は隣で、事実をそのまま渡すことの重さを学んでいた。

あれから十五年。住宅地の浅い穴から、橋脚の何十メートルもの大深度まで、数えきれないほどの縞を読んできた。地面の下が、私をいまの私にしてくれた。建物が建てば、もう誰も土の縞のことなど考えない。それでも私は、その下に積み重なった時間を、最初に見る人間でありつづけたいと思う。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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