古い家の、測定
築四十年の家を、欠陥ではなく記録として測る

シマヅカイ(35歳・住宅の気密測定士12年)

新しい家ばかり測ってきた私が、近ごろは古い家を測る。断熱リフォームをする前に一度、終わったあとにもう一度。前と後の数字を並べて、どれだけ穴を塞げたかをお見せする仕事だ。新築は生まれたての家を測る。古い家を測るのは、四十年生きてきた家の履歴書を読むことに近い。

その家は築四十年だった。木造の平屋で、玄関に送風機を据えてスイッチを入れた。新築なら、減圧が進むにつれて数字が落ち着いてくる。けれどその日は、測定器の表示がぐんぐん上がって、そのまま振り切れた。レンジが足りない。家が、吸っても吸っても痩せない。これだけの穴があれば、ファンは家の空気ではなく、ほとんど外の空気を吸っているようなものだった。新築で見慣れたC値とは、桁がひとつ違う世界だった。

古い家の隙間には、定番がある。土壁と柱の取り合い——木が乾いて痩せ、壁との間に細い影のような隙ができている。床の間の裏。天井裏へ抜ける配線まわり。そして引き違いの窓。アルミサッシの引き違いは、構造上、二枚の窓が重なる召し合わせのところがどうしても閉じきらない。手の甲をかざすと、そこから糸のような風が、いくつも、いくつも当たった。昔の家はこうして呼吸していた。いまの基準が、その呼吸を穴と呼ぶ。

測定の前に、住んでいる方に話を聞く。七十代のご夫婦だった。奥さんが「冬はね、廊下が寒くてね。台所からお風呂まで歩くのが、もう」と言って、首をすくめてみせた。私はそのあと廊下を測った。線香をかざすと、煙が掃き出し窓の下枠で、すっと横に流れて消えた。床下から冷たい空気が上がってきている。奥さんの「寒くてね」と、私の数字は、同じ場所を指していた。体感は、いつも数字より先にそこにある。

リフォームが終わって、もう一度測りに行った。窓は樹脂サッシの内窓を足し、床下には断熱材を入れ、天井裏の配線まわりは気密テープで処理してあった。送風機を回す。今度は、針が振り切れなかった。数字は、前のおよそ半分になった。半分。古い家にしては、たいしたものだ。けれど半分は、半分でしかない。土壁は土壁のまま残っている。新築なら塞ぐ穴を、古い家では塞がないまま残す。塞げない、のではなく、塞がない判断がそこにはある。

新築の現場でなら、私は「ここ漏れてます、塞ぎましょう」と言う。穴は減らすべきものだ。けれど古い家では、言葉が変わる。「この窓は内窓で十分です」「土壁はこのままで、廊下の足元だけ手当てしましょう」。完璧を目指さない。〇・五を切る必要はない。寒い廊下が、寒くなくなればいい。同じ数字を扱っていても、その使い方が違うのだ。新築では数字は目標で、古い家では数字は目安になる。

古い家には、新築にはない音がある。風の強い日、引き違い窓の召し合わせが、ひゅう、と細く鳴る。住んでいる人にはもう聞こえない、暮らしの底に沈んだ音だ。私はそれを欠陥として聞かない。この家が四十年、どこから息をしてきたかの記録として聞く。数字にする前の、家の声のようなものとして。

あれから古い家を測るたびに思う。新築を測るのは、これから始まる家に立ち会うことだった。古い家を測るのは、もう積み重なってしまった時間に、後から数字をあてがうことだ。振り切れた測定器も、土壁の隙間も、奥さんの「寒くてね」も、半分になった数字も、塞がなかった穴も、ぜんぶがこの家の記録だった。私は隙間を数字にする人間だが、古い家の前では、数字にならないものの多さを、いつもより少しだけ長く見ている。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。