オフの、改修
誰も走らないグラウンドの、来季のための数か月

タチアラシユウト(39歳・球場のグラウンドキーパー17年)

最終戦の翌朝、がらんとしたグラウンドに立つと、ここからが本当の仕事なのだと改めて思う。観客のいない数か月、誰も走らない土の上で、私たちは来季のために土を入れ替え、芝を張り替え、地面の下まで手を入れていく。シーズンが終わってから、もうひとつのシーズンが始まるのだ。

まずは内野の土を全面で入れ替える年がある。重機が入り、表層から十数センチをはぎ取って、新しい土を入れる。古い土はトラックで運び出され、荷台で見ると思いのほか少なく見える。一年踏まれて、握っても崩れなくなった土だ。新しい土は色が明るく、握るとよく崩れる。この崩れる手応えが、来季の一年分のはじまりなのだと思うと、感慨深いものがある。

芝は全面ではなく、傷んだ区画だけを張り替える。どこを替えるかは、一年の摩耗を見て決める。外野の定位置のあたり、左中間の打球がよく落ちる帯、そしてベンチ前。芝が薄くなり、地肌が透けて見える場所が、選手の足が一年でいちばん通った地図になっている。私はその地図を見て、こことここ、と区切っていく。張り替えない区画には、根に刃を入れて空気を通す更新作業をかける。

土と芝の下には、水を抜くための配管が通っている。暗渠というやつだ。砂利の層の中に管が伏せてあって、降った水を集めて外へ流す。シーズン中は見えない。オフのこの時期だけ、点検口を開けて中を覗く。落ち葉や細かい砂が詰まっていないか、流れが鈍っていないか。地面の下のことだから、誰も気にしない。けれど、ここが詰まれば、夏の夕立のあとに水が引かなくなる。見えないところほど、丁寧にやるべきなのかもしれない。

勾配も測り直す。グラウンドは平らに見えて、平らではない。マウンドを頂点に、内野からファウルゾーンへ向けて、ごくわずかに傾けてある。水が流れるための勾配だ。一年踏まれ、ならされ、その傾きは少しずつ崩れる。私はレベルを覗き、標尺を立て、何メートルで何ミリ下がっているかを書き留めていく。ミリ単位の土木だ。地味な数字の作業だが、これを怠れば、雨のあと内野に水たまりが残る。

土でないものにも冬の仕事がある。フェンスのクッションがへたっていれば張り替え、ベースを固定する金具を点検し、傷んだベースそのものを新しいものに替える。これらは土や芝のように生きてはいないから、淡々と数を確認して交換するだけだ。けれど備品が一つ欠けても、開幕の日には間に合わない。リストを片手に、一つずつ消し込んでいく。

すべては開幕から逆算して組む。新しい芝が根を張って踏める強さになるまで、これだけの日数。入れ替えた土が落ち着いて、握って崩れる帯に入るまで、これだけの日数。だから土の入れ替えはいつまでに終え、芝の張り替えはいつまでに、と工程表を引いていく。冬の寒い日は土が動かない。雪が降れば作業は止まる。天候の余白も見込んで、私は開幕の日から数字を遡らせていく。

誰も走らないグラウンドで、私たちは数か月をかけて、来季の足の下を作っている。観客もいない、選手もいない、歓声もない。あるのは重機の音と、標尺の数字と、消し込んでいくリストだけだ。けれど、この静かな数か月があるからこそ、開幕の日に選手は何も気づかずに走れる。オフが、来季を作るのだ。誰にも気づかれないこの数か月こそ、グラウンドキーパーの本当の仕事なのだと、私はいまでは思っている。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。