修学旅行、台湾だった。
正直に書くけど、俺、歴史とか全然興味ない。出発前の事前学習の資料、ほぼ読まなかった。日本統治がどうとか、二・二八がどうとか、いや、先生から聞いたけど、頭に入ってない。3泊4日、とにかく友達と楽しめればいいじゃん、って思ってた。
で、実際、マジで楽しかった。
LCCで桃園国際空港。深夜着。眠い。
空港のWi-Fi繋がった瞬間、グループLINEに「着いたー」の嵐。ひとり5回くらい自撮り投稿。俺もやった。
空港出て、バスに乗って、市内に向かう途中、道路脇の看板に日本語が混じってる。というか、普通に日本語ある。「ユニクロ」「無印良品」「大戸屋」「ミスタードーナツ」「サイゼリヤ」。
友達「え、ここ日本じゃん」
俺「日本じゃないけど日本」
っていう会話を、たぶん全国から来てる修学旅行生の何万人が、この瞬間、一斉にやってる。想像したらちょっと笑えた。
夜、士林夜市。
屋台、人、湯気、匂い、音楽、呼び込み、全部が同時に来る。最初の10分、脳がついていかない。でも慣れる。
食べたもの、覚えてる限り列挙する。
一晩で胃がバグった。でも後悔はない。
夜市は、神。
二日目、自由行動の時間。
グループで西門町に行った。渋谷みたいな繁華街。若い人多い。K-POPの看板、アイドルのポスター、タピオカ屋、ゲーセン。
で、俺たち、何してたかっていうと、ドン・キホーテに入ってた。
台湾まで来て、ドンキ。しかも日本のドンキとほぼ同じ品揃え。違いは、日本語の値札に台湾ドルが併記されてることくらい。
友達「わざわざ台湾来てドンキで買い物するの、なんか違くない?」
俺「でも、買うよね」
友達「買うわ」
買った。パッケージが違う限定のポッキー、現地版のカルビー、台湾限定の森永のお菓子。全部、日本企業の商品。
帰りに、隣の無印良品にも入った。ユニクロも入った。GUも入った。サイゼリヤでお昼食べた。
台湾で、日本のチェーンだけで、丸一日過ごせる。
これってどうなんだろう、と一瞬思ったけど、友達が「楽しけりゃいいじゃん」って言って、確かに、って思って、それで終わった。
気になったこと。日本のアニメ・キャラクター、街のいたるところにいる。
挙げていく。
で、友達と話してて気づいたのは、台湾の人たち、日本のアニメを、日本人より真剣に見てるかもしれない。
夜市の屋台のお兄さん(20代くらい)が、俺の友達のTシャツを見て、「それ、呪術廻戦の宿儺でしょ」って日本語で話しかけてきた。声のトーン、完全にアニメオタク。友達が「そうそう、五条悟が推し」って返したら、三分くらい、日本語でオタクトークが始まった。
俺は横で「日本のアニメの話で、台湾で、日本語で、盛り上がる」って、この状況の説明不能さに笑ってた。
夜市、コンビニ、タピオカ屋、土産物屋、繁華街のどこでも、日本語で話しかけてくる店員がいた。
聞いてみると、だいたいこう言う。
「日本のアニメで覚えました」
「YouTubeで勉強しました」
「日本のドラマが好きで」
「日本に旅行行ったことあります」
若い店員さんは、ほぼこの四パターン。俺たちより日本のアニメに詳しい店員も普通にいる。
嬉しい。というか、楽。英語でメニュー読まなくていい。指差しでもいいし、普通に日本語で「これ、辛いですか」って聞ける。
友達と「なんか、俺ら、ちょっと甘やかされてない?」って話した。甘やかされてる。でも、甘える。若い店員さんのほうも、日本のオタク文化で育ってるから、話が合う。お互い得してる、ってことにしておく。
俺たちの世代、台湾の若い人たちと、ほぼ同じアニメで育ってる。だから話しかけられたら、すぐ打ち解ける。国境ってなんだろうな、って一瞬思って、でも深く考えなかった。深く考える時間、3泊4日にはない。
正直に書く。故宮博物院、眠かった。
いや、すごいのは分かる。中国四千年の至宝とか、翠玉白菜とか。でも、高2の俺たちには、展示の漢字、重すぎた。
友達とずっと、「いつ終わるんだろう、これ」って顔を見合わせてた。
中正記念堂も、似た感じ。でかい銅像。衛兵の交代式は、ちょっと面白かった。でも、なんで彼がそこに立ってるのか、正直、当時の俺は分かってなかった。今でも半分くらいしか分かってない。
歴史、入ってこない。
入ってこない自分を、悪いとは思ってなかった。今も、そんなには思ってない。ただ、あのとき入ってこなかったものが、後から急に入ってくる日があるのかもしれない、ってことだけ、うっすら想像はしてる。
最終日の夜、台北101の展望台。夜景。インスタ映え。友達とジャンプ写真10枚連写。一番盛れたやつをストーリーに上げた。いいね、27個。悪くない。
帰りの機内、疲れで寝落ちしそうな中、友達とぽつぽつ話した。
友達「台湾、またすぐ行きたい」
俺「わかる。次は高雄とか行きたい」
友達「夜市、全国制覇したい」
俺「それな」
で、ちょっと黙った。窓の外、雲の上。
友達が先に寝た。俺も、タピオカを三杯飲んだ胃を抱えて、うつらうつらした。
羽田に着いた。家に帰った。台湾ドルの余りを机の引き出しに放り込んだ。
ドンキで買った限定ポッキー、母さんと食べた。「美味しいね」で終わった。
翌日の学校、修学旅行の感想、先生に提出。夜市と故宮と台北101のことを書いた。提出した紙は、俺にしてはめずらしく、原稿用紙三枚にぎっしりだった。
台湾、マジで楽しかった。
それは本当。
また行きたい。
次は高雄と台南、全部回る。