「輝け☆青春」がすでにダルい
——文化祭スローガン問題

タケウチソウタ

文化祭実行委員になった。なりたくてなったわけじゃない。ジャンケンで負けた。

仕事はいろいろあるらしいけど、最初に降ってきたのが「クラスのスローガンを決めろ」だった。

で、候補が出てきた。見た瞬間、あの感じがきた。LINEのグループ名の件以来ずっとある、あの「嘘くさい」のセンサーが反応した。

候補、全部どこかで見た

クラスのLINEグループに投げられたスローガン候補。

「輝け☆青春」

誰のスマホにも変換候補で出てきそう。「輝け」って命令形なのも気になる。誰に言ってんだよ。

「最高の思い出を」

「を」で止めるやつ。体言止めっていうらしい。ソノダさんの記事で読んだ。マンションの広告がよくやるやつ。高校生もやるのか。

「一致団結」

四字熟語。安全。誰にも刺さらない。でも誰にも怒られない。そういう言葉。

3つとも、別のどのクラスが使っても成立する。うちのクラスじゃなきゃダメな理由がゼロ。

去年の文化祭パンフ見たら、隣のクラスが「最高の青春を!」って書いてた。ほぼ合体してるじゃん。

盛ってるのに、何も言ってない

ここ数ヶ月、ソノダさんの記事を読んでて気づいたことがある。

盛った言葉って、テンションは高い。「輝け」「最高」「団結」。全部すごそう。でも中身がない。何をやるのかが一文字も書いてない。

「輝け☆青春」って、何をしたら輝いたことになるの? たこ焼き屋で黒字出したら? お化け屋敷で1年生を泣かせたら? 後夜祭で踊ったら?

全部「輝く」でカバーできる。つまり何も言ってない。

テンション:MAX
情報量:ゼロ

LINEのグループ名で「永遠の仲間たち」って名付けたのと同じ構造だ。あのとき俺は、テンションの一番高い瞬間を名前に冷凍保存してたんだって気づいた。スローガンもそれじゃん。

ソノダさんにLINEした

我ながらすぐ聞くなと思うけど、ソノダさんにLINEした。

俺「文化祭のスローガン決めなきゃいけないんですけど、候補が全部盛ってて嘘くさいです。盛らない言葉でスローガン作りたいんですけど」

ソノダさんの返信、ちょっと間があった。

ソノダ「それ、リポエ——」

途中で消された。打ち直し。

ソノダ「いや、つまり、嘘のないキャッチコピーを作るってことだね。面白いじゃん」

「リポエ」って何だったんだろう。まあいいや。たぶん大人の専門用語。俺には関係ない。

ソノダさんは続けた。

ソノダ「ひとつ聞いていい? 盛らないスローガンって、たとえばどういうの?」

俺「うーん……『たこ焼き300個焼く』とか」

ソノダ「笑 それスローガンっていうか目標だね。でもさ、少なくとも何をやるかは書いてあるよね。『輝け☆青春』よりは」

たしかに。「たこ焼き300個焼く」は具体的だ。達成したかどうかも数えられる。バカみたいだけど、「輝け☆青春」より嘘がない。

クラスで言ってみた

翌日のHR。スローガンを決める時間。

実行委員だから前に立った。まず3つの候補を黒板に書いた。「輝け☆青春」「最高の思い出を」「一致団結」。で、言った。

「この3つ、隣のクラスが使っても成り立つよね。うちのクラスだけの言葉にしたくない?」

シーン。

ヤバい。スベった?

後ろの席のヤマモトが手を挙げた。「じゃあお前が考えろよ」。正論。

俺は「たこ焼き300個焼く」って言おうとしたけど、さすがにそれは出し物が決まってない段階では意味不明だから、こう言った。

「盛らないスローガンにしたい。かっこつけてない、でもつまんなくもない、そういうの」

ヤマモト「それ、具体的に何」

俺「……まだない」

教室の半分くらいが笑った。

「盛らない」と「つまらない」の壁

そこから議論になった。っていうか、言い合いになった。

サカモトさん(学級委員長、ちゃんとしてる人)が言った。「盛らないってことは、テンション低いってこと? 文化祭なのに?」

違うんだよ。盛らないのと、つまらないのは違う。

でもその違いを説明できなかった。「嘘くさくないけどテンション上がる言葉」って、なんだよ。

盛った言葉:テンション高い。でも中身がない
盛らない言葉:中身はある。でもテンションが上がらない?
欲しいもの:中身があって、テンションも上がる言葉

そんな都合のいい言葉、あるのか?

ミウラ(バスケ部の先輩、別のクラス)が廊下から覗いてきて「おーい何揉めてんの」って言ってきた。ミウラは関係ない。帰れ。

カドが言った一言

議論が堂々めぐりしてるとき、普段あんまり喋らないカド(角田、窓際の席)がボソッと言った。

「去年のスローガン覚えてる人いる?」

シーン。誰も覚えてない。

カド「俺も覚えてない。スローガンってそういうもんじゃん。誰も覚えてないけど、決めなきゃいけないやつ

なんかそれで空気が変わった。

そう、スローガンって誰も覚えてない。「輝け☆青春」でも「一致団結」でも、来年の今頃には忘れてる。だからこそ盛るのか? 忘れられるなら適当でいいのか?

俺は逆だと思った。どうせ忘れるなら、せめて嘘じゃないことを書きたい。

結局どうなったか

そのあと、いろんな案が出た。「1年3組」「やるだけやる」「とりあえず文化祭」。盛らない方向に振れすぎて投げやりになってきた。それはそれで違う。

最終的に、多数決で決まったスローガンは——

……いや、ここでは書かない。

なんでかっていうと、俺たちのクラスの言葉だから。ネットに載せるもんじゃない。それは盛ってない本当の言葉だから、教室の黒板に書いてあればいい。

ひとつだけ言えるのは、「輝け」も「最高」も「団結」も入ってない。
でもクラスの何人かは笑ってた。
それでいいと思った。

盛らないのは、けっこう難しい

帰りにソノダさんにLINEで報告した。「スローガン決まりました。盛りませんでした」。

ソノダ「おお。で、何に決まったの?」

俺「秘密です」

ソノダ「笑 なんで」

俺「うちのクラスの言葉なんで」

ソノダさん、しばらく既読のまま返信がなかった。そのあと。

ソノダ「それが一番正しい答えだと思う」

意味がよくわかんなかったけど、たぶん褒められてた。

「盛らない言葉を作る」って、最初は簡単だと思ってた。かっこいいこと言わなきゃいいんだから。でも違った。盛らないで、なおかつ人の心が動く言葉を見つけるのは、盛るより何倍も難しかった。

「輝け☆青春」って書くのは3秒でできる。あのスローガンにたどり着くのに、うちのクラスは45分かかった。

でも45分かけた言葉は、3秒の言葉とは違う何かがあった。少なくとも俺はそう思う。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。タケウチソウタは架空の人物です。