品目の、番号(第二稿)
通関業者一年目、書類の前に現物を見ろと言われた日

トコナミハジメ(45歳・通関士23年)

税関に出す申告書のいちばん上に書くのは、品名ではなく数字だ。HSコード。頭の二桁の「類」から始まって、材質と用途で枝分かれしながら、六桁、九桁と細くなる。私の仕事は、目の前の荷物を、その樹形図のどの枝に置くかを決めることだ。二〇〇三年、二十二歳で通関士の試験に受かり、港町の通関業者に入った。頭には法令とルールが詰まっていた。現物は、まだ一つも見ていなかった。

配属の翌週、一件が回ってきた。組み立て式の自動車の輸入。私はそれを95類、子どものおもちゃの枝に入れた。だがすぐ手が止まった。同じ自動車でも、縮尺を再現した収集用の精密模型なら、おもちゃとは別の枝になる。税率が違う。一桁の差が、輸入者の払う税額を変える。私は箱の写真と仕様書を見比べて、おもちゃと模型の境目で迷った。書類の上では、どちらにも書けた。

おもちゃの番号で申告書を作り、先輩に見せに行った。二十年選手で、書類をちらりと見て、それから私の顔を見た。「お前、現物見たか」。書類は揃っています、と私は答えた。先輩は立ち上がって「来い」と言った。倉庫だった。

倉庫で梱包を開けさせた。出てきたのは、私が写真で思っていたものと違った。塗装の塗り分けも、ドアミラーの一枚板の薄さも、子ども向けの遊具ではなかった。台座まで付いていた。これは飾るものだ。書類のモノと、本物のモノが、違っていた。先輩は車体を手に取って言った。「モノを見ろ。書類のモノじゃない、本物のモノだ。番号はそれから付く」。私は申告書を破って、番号を書き直した。

それでも箱を開けるだけでは決まらない品目はある。あるとき、薬効をうたう輸入飲料が来た。食品なのか、医薬部外品なのか、税関の窓口で押し問答になった。私は事前教示を申請した。輸入の前に、この品はこの番号でよいかを税関に文書で問う制度だ。回答の日、職員は現物の成分表を指でなぞって、「この含有量なら食品です。ただし表示にこの一語があると別の話になる」と言った。番号は、ラベルの一語で動いた。机を挟んだ一往復で、グレーに線が引かれた。

深夜の事務所のことも忘れない。輸出の申告は本船のスケジュールに追われる。この便に間に合わなければ荷物は港で次便を待ち、向こうの納期が崩れる。締切は私の都合では一分も動かない。本船が出るまでに、HSコードの確認のための電話を、夜の海運会社にかけ続けた夜があった。受話器の向こうで、ガントリークレーンの音がしていた。

扱う品目で、覗ける商売が変わる。食品をやれば添加物の規制が、機械をやれば部品か完成品かの境目が見えた。未組立でも完成品の本質的特徴を備えていれば、関税の通則では完成品に分類される。ノックダウンで送って組み立てる、その線引きの上に、いくつもの工場の損得が乗っていた。私は番号を付ける手で、業種の内側に毎回少しだけ触れた。

二十三年で付けた番号は数え切れない。ほとんど覚えていない。覚えているのは、最初に番号を書き直した倉庫の、あの車体の台座の重さだ。書類は、まだ何も見ていなかった私のものだった。番号は、現物を見たあとの私が付けた。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。