ブレードの、傷
回る翼を、止めて直すか回して見るか

トオミネリツ(37歳・風力発電のメンテナンス15年)

羽根は、空を切るためにある。地上から見上げると、その白い翼が大空を優雅になでていくように見える。だが私の仕事は、その優雅さの裏側にある無数の傷を見つけることだ。翼にも、人と同じように健康診断がいる。

まず地上から見る。双眼鏡と、望遠レンズをつけたカメラ。回している翼を止めずに、下から見上げて撮る。三枚の羽根が一定の周期で同じ位置を通るから、そこにカメラを構えて、通過する瞬間を連写する。風が安定している日なら、これだけで前縁のおおまかな荒れはわかる。日常の点検は、回したまま見る。止めれば一日分の発電が消えるからだ。

近頃はドローンを飛ばす。回転を止めて、翼に沿って機体を上げていく。画面に映るのは、地上の望遠ではつぶれていた前縁の浸食だ。先端から半径で十数メートル、塗装の下の繊維が毛羽立ち、白い縁が灰色にささくれている。雨と砂が、毎秒八十メートルで当たり続けた距離が、そのまま荒れの長さになる。翼の縁は、空気を一番速く受ける場所だから、いちばん先に削れる。

浸食が積層に届きかけていれば、補修になる。これはロープアクセスだ。ナセルの上から二本のロープを垂らし、ハーネスでぶら下がって、回転を止めた一枚の翼に取り付く。風のない朝を選ぶ。空中で片手でロープ、片手で道具という体勢で、荒れた前縁を削って整え、樹脂を充填し、硬化を待って表面を成形する。地上百メートルで、白い翼の腹に小さくぶら下がって、私は紙やすりをかけている。下を見ないようにする、とは言わない。下は、見えている。

落雷の跡も見る。翼の先端には、レセプターという金属の的が埋め込まれている。雷を、ここで受けてくださいという小さな約束だ。狙いどおり先端の的で受けていれば、電流はケーブルを通って地面に逃げ、翼体は無事だ。的を外して中ほどに穴が空いていれば、積層の中で蒸気が膨らんで割れている。レセプターの溶けかた、焦げの位置。雷がどこを通ったかを、金属の的が黙って記録している。

補修をすると、重さが変わる。樹脂を盛れば、その分だけ翼が重くなる。三枚の羽根は、グラム単位で重量が揃っていなければならない。一枚だけ重ければ、回転のたびに偏った力がかかり、軸受けが余計にすり減る。だから補修のあとは、どこに何グラム足したかを記録し、必要なら反対側に釣り合いの重りを入れる。翼を直すことは、回転のバランスを直すことでもあるのかもしれない。

そして、音だ。傷が広がると、風切り音が変わる。前縁がささくれ立てば、空気がそこで乱れて、低い唸りに細かいざらつきが混じる。地上の詰所で記録をつけていて、その違和感がふと耳に引っかかる。目の点検より先に、耳が異常の最初のサインを拾うことがある。翼が、いつもと違う声で鳴いているように聞こえる、と言ってしまえば、少し詩的すぎるだろうか。

傷を見つけるたびに、私は判断する。いますぐ止めて直すべき傷か、回しながら見守ってよい傷か。止めれば発電が止まる。回し続ければ傷は育つ。その境目を見極めて、止めるか回すかを決めることこそが、保守という仕事の本質なのだ。私は今日も、回る翼の声を聞いている。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。