ポケットを、確かめる仕事(第二稿)
受付一年目、読まない観察者になるまで

ウエハラセツコ(61歳・クリーニング店受付38年)

預かり伝票は複写式だ。一枚書くと、お客さまの控えと、店の控えの二枚になる。同じ番号が、二か所に残る。受付に三十八年立ってきて、私はこの番号で、服とお客さまをつないでいる。

うちには、預かった服のポケットは必ず確かめる、という決まりがある。洗うと壊れる物、洗うと消える物が入っているからだ。五百円玉。レシート。診察券。洗濯機の中で粉になった物を、お返しするわけにはいかない。だから確かめる。確かめて、出す。それだけだ。

一九八八年、二十三歳で受付に入った一年目だった。預かった背広の内ポケットの底に、たたんだ紙が一枚あった。指で広げかけて、私は手を止めた。広げれば、字が読める。先輩がカウンターの内側から、読まなくていいのよ、と言った。読まない。詮索しない。必ず返す。その三つが店の決まりだと、そのとき教わった。

私は紙を広げずにたたみ直した。だから、それが手紙だったのか、伝票だったのか、いまでもわからない。封筒袋に入れて、タグガンでタグを留めた。パチン、と鳴った。タグの番号は、預かり伝票の番号と同じ。お客さまの控えと、店の控えと、そして紙の入った封筒袋が、ひとつの番号でつながった。

返却の日、その封筒袋をお渡しした。お客さまが中で何を受け取ったのか、私は見ていない。見ないために、私たちは封筒袋を使う。中身は、お客さまと、お客さまだけのものだ。店に残ったのは、控えに書かれた番号だけだった。

七番ラックの奥に、一年半預かったままの喪服があった。番号は四二一。取りに来られないまま、店の控えだけが引き出しに残っていた。ポケットを確かめたとき、たたんだ白い袋が入っていた。中は見ない。私はそれも封筒袋に移して、同じ四二一のタグを留めた。喪服がいつか出ていくとき、四二一は一緒に出ていく。出ていかなければ、四二一は店に残り続ける。

三十八年、ポケットからは数え切れない物が出てきた。五百円玉も、レシートも、診察券も、私は手に取った。広げなかった紙が、何枚あったかは覚えていない。覚えているのは、最初の一枚だ。背広の内ポケットの底にあった、たたんだ紙。読まなかったから、何だったかは、わからないままだ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。