瓦の、重なり(第二稿)
職人一年目、屋根は一枚では葺けないと知るまで

ウキョウイチカ(42歳・瓦葺き職人20年)

瓦には「働き」という寸法がある。一枚を屋根に置くと、上のほうは次の瓦に隠れて、雨を受けない。残って、空に向いている部分。それが働きだ。和瓦なら、二三五ミリほど。一枚の長さは三百ミリ近くあるのに、本当に働くのは、そのうちの二三五ミリだけだ。

二〇〇六年の春、二十二歳で瓦の工務店に入った。最初の現場で、屋根の上から親方に呼ばれた。瓦を一枚渡されて、「これ一枚で、雨は防げるか」と訊かれた。防げません、と答えた。「そうだ。一枚じゃ防げん。重なりが防ぐんだ。働き寸法で屋根を読め」。

屋根は割り付けから始まる。軒から棟までを測って、働き寸法で割る。割り切れることはまずない。端数が出たら、一段あたり数ミリ、働きを詰めるか伸ばすかして散らす。最後の一段が半端な細さにならないように。横は瓦の幅で割って、同じことをする。親方は屋根に上がると、まず鉛筆を耳から抜いて、垂木の上で割り算をした。私もそれを覚えた。屋根を葺くとは、まず数を合わせることだった。

瓦は焼き物だから、一枚ずつ反りが違う。反りの強い瓦を軒先に回すと、先がはね上がって雨が裏に回る。だから手に取って指で反りを見て、強いのは棟寄りの段に上げ、素直なのを軒に並べる。重さや手触りで見分けるのではない。指でなぞって、反りの向きを決める。それだけのことだ。

昔は葺き土を盛って、その上に瓦を据えた。土が瓦を支え、勾配は土の量で加減した。いまは野地板に桟木を打って、瓦の裏の爪を桟に引っ掛ける。引っ掛け桟瓦葺き。土を使わないから屋根は軽く、地震に強い。親方の手は、土を捏ねて、量で勾配を読む手だった。私の手は、桟の高さを測って釘を打つ手だ。土を盛る手を、私はもう持っていない。

棟は、のし瓦を一段ずつずらして積み上げる。一段積むごとに棟は重くなって、座りが変わる。糸を張って、段の通りを見る。曲がっていれば、抜いて積み直す。下から丁寧に葺いても、棟の通りが甘ければ、屋根全体が間延びして見える。棟は屋根の背骨だ。

地震や台風のあとは、点検に呼ばれる。ずれた瓦には読み方がある。一枚だけ浮いているのか、列でめくれているのか、棟が割れているのか。めくれの向きを見れば、どの方角から風が入って、どこを起点にめくれ上がったかが分かる。瓦は、自分がどう壊れたかを、ずれの形で残している。私は屋根の上で、谷を踏まないように山に足を置き、その壊れた形を読む。谷を踏めば、その下の重なりが崩れ、雨の道ができる。

葺き替えで、まだ使える古い瓦を外して、また葺くことがある。困るのは色だ。いぶしの銀色は、年月で一枚ずつ違う焼け方をしていて、新しいのし瓦を足すと、そこだけ色が浮く。先月の現場では、浮いた三枚を北面の、軒のいちばん端に回した。雨は防ぐ。色は、通りから見えない。二十年やって、私が覚えたのは、揃わないものを、揃わないまま、どこに納めるかだ。重なりが、雨を防ぐ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。