アンドウユイ(教務アシスタント)
大学案内の改訂で手が止まるのは、新しく載せる研究室ではなく、載せなくなった研究室の後始末だ。2014年版の見開きには「生体計測研究室」があり、教員写真の下に脈波計測と筋電解析の説明が二行入っていた。現行版からその欄を外すと、関連ページの注記だけが浮く。履修モデルには「医用信号処理に関心のある学生向け」と残り、実験室配置図ではE棟4階401Bだけ別の研究室名に差し替わる。消したのは一欄でも、直す箇所は点で終わらない。
私は版下PDF、紀要、組織図、設備台帳を順に当たった。同じ教員名は、工学部機械情報系、情報学群知能メディア分野、教育研究支援センターの順で現れる。研究紹介の見出しだけが毎回先に変わり、「生体計測」は「ヒューマンセンシング」になり、次の年度には「学習支援技術」の項目に吸われた。これは言い換えではない。受験生向けの紙面で見せたい語に合わせて、研究室の輪郭そのものが削られていた。
設備台帳の写しでは、同じ多用途生体アンプの設置場所コードがE4-401Bから情報棟2-208へ移り、その後は共通教育棟1-023になっていた。ところが管理責任者欄の姓は三回とも同じだった。部屋は替わっても、装置は人について動いている。古い電話帳では内線3772がその教員名の横にあり、今年の教職員名簿には番号がない。それでも共同研究契約書の連絡先には、3772から始まる学内表記が残っていた。消える順番が書類ごとに違う。
さらに食い違っていたのは学生の記録だった。2018年度の卒業論文要旨集には、学生二人の所属として「生体計測研究室」と印字されている。同じ年度の大学案内にはその欄がもうない。学生はその名前で卒論を出しているのに、募集用の冊子だけが先に切り替わっていた。改組は実態が落ち着くまで待たない。外向けの名前から先に更新する。その順番が、照合表を作ると露骨に見える。
来年度版では、私は別名義でその教員を載せる。そう決めても、机の上に開いたままの資料が閉じない。2014年の版下、2018年の要旨集、設置場所コードを書き換えた資産票、その横に内線3772の電話帳がある。組織図は整っているのに、この四つはきれいに重ならない。いちばん長く残るのは立派な新名称ではなく、401Bの旧室名プレートを外したあとの、細い両面テープの跡である。