引っ越しの、箱(第二稿)
詰めるのは素人、運ぶのは作業員——両方の手に向かって設計する

ウオズミショウ(46歳・段ボール箱の設計者22年)

引っ越しの箱には、相手が二人いる。詰めるのは素人だ。今夜引っ越すと決まった家族が、食器を新聞紙にくるんで詰める。運ぶのは作業員だ。一日に何百個と持ち上げ、階段を上り、トラックに積む。要求が違う二人の手に、同じ一つの箱で応える。通販の箱は一度開けたら捨てられるが、引っ越しの箱は詰めて、運ばれて、開けて、畳まれて、次の三月にまた戻ってくる。

三月だ。日本の引っ越しは年度末に集中する。賃貸の更新、人事異動、進学。世帯がいっせいに動くひと月のために、二月から罫線機を二直で回す。一日に刷る枚数の話はしない。返却された箱の検品の話をしたい。そこに設計のすべてが出るからだ。

本の箱は小さく、服の箱は大きく作る。本は重い。大きな箱に詰めれば二十キロを超え、誰も持ち上げられない。だから本用は、満杯でも持てる重さで頭打ちになる外寸にする。服や布団は軽くてかさばるから、大きくても重くならない。中身の都合ではなく、運ぶ人の腰が持てる限界から、箱の大きさを逆算する。

持ち手の穴も、この二種で分ける。穴があれば作業員は指をかけられて腰が楽だ。だが穴は箱を弱くする。段ボールの強度は、面が連続していることで生まれる。穴をあけた瞬間、そこから座屈が始まる。だから重い本の箱には穴を開けない。荷重の通り道を断つわけにはいかない。穴を開けるのは、軽い服の箱だけだ。その穴の高さは、上から三分の一。底に近すぎれば荷重の道を断ち、上すぎれば指が中身に当たる。何ミリの単位で置く。

底は、ガムテープなしで組む。ワンタッチ底という機構だ。四枚のフラップに切り込みと折り筋を入れておき、箱を起こして底を押すと、四枚が互いに噛み合って自分で底になる。引っ越しの朝、テープガンの音が鳴り止まない現場で、底を組む数秒を省く。何百個もだ。その切り込みの形に、現場の腕を守る数秒が畳み込んである。

三月末、運送会社からトラックで返却された箱が、検品台に積まれる。角が潰れ、服の箱の穴が裂け、底の噛み合わせが甘くなったものを、私は手で選り分ける。再利用の傷みを見込んで、初めから通販の箱より一段厚く組んである。何度三月を越せるか、それも設計の数字だ。

検品台の一つに、側面のマジックがある。「キッチン」。前の引っ越しで誰かが台所の物を詰め、新しい家の台所に運ばれた箱だ。剥がし忘れたガムテープが端で反り返り、字は少しにじんでいる。別の引っ越しでは、その下に「本」と上書きされていた。台所から本棚へ、知らない家から知らない家へ。私は底の噛み合わせを確かめ、まだ使える箱の山に積む。次の三月、この箱はまた誰かの台所を詰めて、運ばれていく。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。