夜間の、呼び出し
緊急手術の夜、地下にも電話が鳴る

ヤエガシモネ(42歳・病院の滅菌技士20年)

夜の病院は、昼とは別の場所になる。張り詰めた空気が廊下に満ちて、人の気配だけが消えていく。地下の中央材料室には、当直の私が一人。昼間は何台もの洗浄機が並んで鳴っているこの部屋も、夜は機械がすべて止まって、ただ静まり返っている。そんな夜にこそ、電話は鳴るのだと思う。

内線が鳴る。手術室の番号だ。受話器を取ると、声が速い。緊急の開腹で、定数のセットだけでは器械が足りない、という。日勤の私たちは、その日に予定された手術ぶんの器械しか滅菌して用意していない。予定にない夜の手術は、誰かがそのつど器械を起こしてやらないと、回らないのだった。声の速さで、どれくらい急いでいるかは分かる気がした。

足りないぶんは、近隣の病院かメーカーから借りる。けれど、借りた器械は届いてすぐ使えるわけではない。よそから来た器械は、いったん洗って、点検して、組んで、滅菌してからでないと、手術室には出せない。だから私は、届く時刻から逆算する。洗浄機が回るのに何分、滅菌に何分。間に合うのか、間に合わないのか。たぶん、夜勤でいちばん頭を使うのは、この時間の引き算なのだと思う。

幸い、その夜は手早い滅菌のプログラムが使える器械だった。高速のプログラムは、限られた条件のときだけ使える。包みの中身や材質によっては使えないこともあって、何でも速くできるわけではない。条件に合うかどうかを確かめてから、私はそのボタンを押した。重い扉が閉まって、いつもの蒸気の音が、静かな部屋に響きはじめた。

貸出器械が届いた。台車に載った、見慣れない金属のケース。よその病院のシールが貼ってある。中身をあらためて、洗浄機のラックに並べていく。鉗子、剪刀、鑷子。同じ名前の器械でも、よその器械はどこか手になじまない。これが間もなく、私の知らない誰かのお腹の中に入るのだと思いながら、私は刃を下にして溝に立てた。

滅菌が終わるのを待つあいだ、私は止まった洗浄機の前に座っていた。昼はうるさいほど鳴るこの機械たちが、夜は一台も動かない。緊急滅菌器だけが、低く唸っている。手術室の音は、ここまでは聞こえてこない。電話の声以外には、誰がどんな手術を受けているのかを知るすべがない。私はただ、器械が往復するのを見ているだけだった。

インジケーターの線が、淡い色から濃い色に変わっていた。器械を手術室へ上げる。受け取りに来た看護師は、もう次のことを考える顔をしていて、礼を言うひまもなく台車を押して消えた。それでいいのだと思う。私の仕事は、器械が無事に向こうへ渡ったところで終わる。あとは知らないままでいい。

朝、日勤の人が来る前に、私は引き継ぎメモを書く。何時に呼び出しがあって、どこから何を借りて、どのプログラムで滅菌したか。誰の手術だったかは、私は最後まで知らない。知らないまま、器械だけが地下と手術室を往復する。その往復を支えることが、私の仕事なのだ。今夜も、止まった洗浄機の隣で、緊急滅菌器だけが静かに鳴っていた。

——補記:この第一稿は辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。第一稿・レビュー・第二稿を並置して、改稿の過程を記録しています。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。