マーク(48歳、元ALT、米国在住)
カリフォルニアに越して数ヶ月、車が限界を迎えた。次を探し、近所のウェブサイトで見つけたのは20年落ちのトヨタ4ランナー。手入れが行き届き、週末のキャンプや庭仕事にも良さそうに見えた。画面上の価格は12,000ドル。予算上限ぎりぎりの数字だった。
数日後、その中古車屋へ向かった。駐車場は砂利が敷かれ、埃っぽい風が顔を撫でる。陽炎で車体の赤が曖昧に見えた。ウェブで見た4ランナーは、店の奥に他の車と並んで鎮座していた。ざっと眺めていると、すぐ若い営業マンが近づいてきた。「何かお探しですか?」と、いかにも客慣れした顔で。4ランナーを指すと、彼はニヤリと笑った。「ああ、あれは良いですよ。ウェブの12,000ドルは少し高めですが、特別に11,000ドルでどうでしょう?」私の心臓が小さく跳ねた。1,000ドルの値引き。この瞬間、私はすでに勝った気でいた。
試乗だけして、その日は帰宅した。営業マンの言葉と、胸に広がる得した気分が渦巻く。しかし念のため、とPCを開きCARFAXとKelley Blue Bookを調べた。すると同年代同走行距離の4ランナーは、8,500ドルから9,500ドルが相場だと知った。一瞬で、頭の中の勝利宣言がしぼむ。私は自分の見栄に値段をつけられていた。
「11,000ドル」。その数字は、相場を知ってなお私の中で基準として居座り続けた。他の店で9,000ドルの車を見ても、「あの11,000ドルよりは安いけど…」と、どこか物足りなさを感じてしまう。最初の数字が、私の判断を縛りつけていた。私は確かにそう断言できる。
その中古車屋には二度と足を運ばなかった。あの埃っぽい駐車場、上滑りな笑顔。一度植え付けられた不信感は消えない。それから一週間、別のウェブサイトを巡り、試乗を重ねた。そしてようやく、街の反対側にある正規ディーラーで別の4ランナーを見つけた。年式も走行距離もほぼ同じで、価格は9,200ドル。CARFAXを確認し、KBBと比較しても適正価格だった。Dealer Feeも込みで、余計な出費はなかった。
新しい4ランナーは、それから数年、週末の相棒として活躍してくれた。庭の土を運び、湖畔へキャンプ道具を満載して走った。最初の店での経験を思い出すたび、私は自分の浅はかさを噛み締める。自分がいかに数字と感情に踊らされやすいか。その事実が、今も微かな苦さとなって残る。