補給港の、買い出し(第二稿)
接岸の数時間で、次の航海ぶんを積む

ホズミナツキ(31歳・内航船の司厨9年)

接岸の知らせは、前の晩に入る。明日の昼に着けて、夕方には出る、と。その晩、私は裏紙に鉛筆でリストを書く。書いては消し、買えた品はあとで横線で潰していく。角が油で反った、私だけの紙だ。航海の献立は、この一枚の上で先に終わらせておく。

勝負は荷役の時間だ。船が貨物を揚げている間しか、私は陸に降りられない。今回は三時間半。坂を上ってスーパーまで往復で四十分、店で品を選んで三十分、市場でもう二十分、運び込みに四十分。残りが、迷っていい時間だ。内訳を頭の中で一度通してから、台車を担いでタラップを降りる。間に合わなければ、沖で六人に詫びることになる。

港ごとに、店の地図が頭に入っている。九年ぶん、足で描いた地図だ。徳山は魚がいい。水島は安い。坂出には日曜でも開いている大きなスーパーがある。どの港のどの坂を上れば何が手に入るか。海図には載らない、司厨だけの地図だ。新しい港に着くたび、一筆、足される。

台車は折り畳みの二輪で、右の車輪が坂の下りでだけ鳴く。米は十キロ、麦茶は二リットルを六本。これがいちばん重い。台車に積めるだけ積んで、坂はタクシーを使う。「船まで」と言うと、運転手は黙って岸壁まで着けてくれる。タラップの下からは人力だ。箱を肩に担いで、揺れる渡し板を一段ずつ上る。腕が、翌朝まで覚えている。

今回の一品は、宇和島のじゃこ天にした。その港でしか手に入らないものを、毎回ひとつだけ忍ばせる。三日目の夕食、軽く炙って大根おろしを添えて出すと、機関長が箸を止めて「これ、どこの」と訊いた。その一言のために、私は重い保冷箱を提げて坂を上る。一品の名前が、次の港まで、食卓に土地を置いていく。

船に戻ると、冷蔵庫の前で立体パズルが始まる。買った順ではなく、使う順に詰める。手前の取りやすい段に、明日あさってに使う葉物。奥の冷える段に、五日目に出す肉のかたまり。卵は扉の上、揺れても落ちない位置。葉物が先、根菜が後ろ。デビュー作の航海と同じ理屈が、ここでは縦と横と奥行きになる。ひとつのドアの中に、五日ぶんの段取りが畳み込まれていく。

残り四十分で、汽笛の試し吹きが聞こえた。詰めかけの手が速くなる。台車を畳んで所定の場所に縛り、裏紙を見て横線の入っていない品を探す――醤油、まだ買っていない。隣の段の予備でしのぐと決めて、最後の箱を運び込む。岸壁の係員が舫いに手をかける。船は、間に合ったとも言わずに岸を離れる。

冷蔵庫の扉を閉める。重い音がして、ゴムのパッキンが鳴る。次の港まで、もう陸はない。中にあるものだけで、六人の五日が回る。扉に背中をあずけて、私は鳴いた台車の車輪のことを思い出している。醤油は、坂出で買い足せばいい。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。