雨の、中止(第二稿)
発破が天に止められる日のこと

ネゴロタケシ(45歳・採石場の発破技士23年)

発破は私たちが決める。だが、やらない日を決めるのは天気のほうだ。雷注意報が出れば中止になる。例外はない。火薬の世界に「たぶん大丈夫だろう」という言葉はないから、雷と火薬が同じ空の下に来そうなら、孔も段取りも、その場で止める。何日も掘ってきた孔を、ひとことの注意報が止める。

中止を決めるのは朝だ。詰所に着いて、まず西の空を見る。気象台の言葉より先に、自分の山の上の雲を見る。西の雲の底が灰から鉛色に変わって、しかも底が平らに切れて見えたら、一時間で来る。これはこの山でしか通じない読み方で、誰に習ったものでもない。二十三年、雨に止められるたびに、この一つを覚えた。

大雨には、別の止め方がある。孔に水が入る。斜めに掘った孔は、ひと晩の雨で底に水が溜まる。水の入った孔に火薬は入れられない。手押しのポンプで水を抜き、孔の奥まで棒を入れて湿りを確かめ、それから装填をやり直す。前の日の午後いっぱいかけた準備が、朝には振り出しに戻っている。雨の音で目が覚めた日は、もう、それだけで一日の見当がつく。

中止が決まった日に、いちばん気を張るのは火薬の段取り直しだ。使わなかった火薬は、現場に置いて帰れない。朝に庫から提げて出た箱を、夕方、同じ箱のまま提げて戻る。出した量と戻した量が、一グラムも合わなければ、誰も帰れない。山を一つも崩せなかった日でも、帳簿は、いつもと同じ重さで閉じる。崩した日も、崩さなかった日も、私の手は同じ箱を運んでいる。

段取り直しが済めば、詰所で待つ。雨の音のなかで、点検棒の先を回して、叩いたときに乾いた音が返るかを確かめる。削岩機の刃を指で撫でて、欠けを探す。図面を広げて、次の壁の孔をどこに開けるか、鉛筆で一本ずつ引き直す。手を動かしている間は、止まっていることを忘れる。鉛筆が止まると、雨の音が急に大きくなる。

若手は、レーダーアプリを見ている。あと三十分で雨雲が抜ける、二時にもう一度来る、と画面の色で言う。私は窓の外の、西の空を見ている。画面の色が言うことと、雲の底が言うことは、たいてい同じだ。違う日もある。違った日は、早く抜けると言った画面より、まだ来ると言った空のほうが、私には当たってきた。だから私は窓を見る。彼は画面を見て、私より十分早く動き出す。それでいい。

再開の朝が来る。空が抜けて、注意報が解ける。私が真っ先にするのは、孔をのぞくことだ。指を第二関節まで入れて、底を撫でる。乾いた砂の手ざわりなら、今日は動ける。冷たく湿っていれば、もう半日、ポンプを用意する。一本ずつ、指を入れて回る。昨日まで雨が何をしたかは、気象台ではなく、この指先が知っている。乾いた孔が一本見つかると、その日がようやく始まる。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。