お互いさま
深夜のタクシー、運転手と乗客

名古屋駅東口、深夜零時過ぎ。雨上がり。三十三年タクシーをやっている六十代の運転手と、出張帰りの三十代の乗客。タクシーは千種区の本山駅方面へ走る。

雨上がり

後部座席のドアが開く。乗客が乗り込む。

運転手お待たせしました。どちらまで

乗客千種の、本山駅のあたりまで、お願いします

運転手本山ね、了解しました

ドアが閉まる音。発車。

運転手雨、上がりましたね

乗客さっきまで、ひどかったです

運転手新幹線、遅れてなかったですか

乗客五分くらいでした

運転手それなら、まあ

乗客助かりました

短い間。エンジン音だけが続く。

運転手名古屋駅、最近、ね

乗客人ですか

運転手人。とくに、夜

乗客そうですか

運転手一年前と比べて、たぶん、倍くらい

乗客増えてますね

運転手深夜便から流れてくるお客さんがね、駅前で、行き先を探してる

乗客拾うんですか

運転手拾います。スマホを見せられて、ここに入れてくれって、住所を

乗客英語は

運転手いやいや、ぜんぜん。スマホ見て、住所入れて、それで走るだけ

乗客通じますね、それで

運転手通じる。会話というより、儀式に近いです

乗客、小さく息を吐く。

乗客儀式

運転手笑わないでくださいよ

乗客笑ってないです。いい言葉だなって、思って

三十三年

信号で止まる。前のテールランプが、濡れたアスファルトに長く伸びる。

運転手私、この仕事、三十三年やってましてね

乗客三十三年

運転手同期がね、最近、どんどん辞めるんです

乗客定年で

運転手定年もいるけど、体を壊して、っていう人のほうが多いかな。深夜をやってると、ね

乗客ええ

運転手同期の一人がね、先月、岐阜の実家に戻りました。お父さんの具合が悪くて

乗客そうですか

運転手入ってくる若い人も、いることはいるんですけど、ほとんどがすぐ辞める

乗客続かない

運転手月の手取りを見て、ね、まあ、わかる気もするんですけど

乗客大変ですね

運転手いえいえ。お客さんこそ、こんな時間に

乗客私も、まあ

運転手お互いさま、ですね

信号が青に変わる。発進。

運転手あと、十年しないうちに、たぶん

乗客何が

運転手この仕事、ほとんど、ロボットになりますよ

乗客自動運転

運転手そうそう。アメリカは、もう、走ってますしね

乗客怖くないですか

運転手怖い、というより、寂しい、のほうが近いです

乗客寂しい

運転手私が辞めたあとの話だと思うからね、ほぼ。そこまでは、持つ

乗客持つ、って

運転手持たせる、ですかね、正確には

短い間。

運転手お客さんはね、何のお仕事

乗客パソコンで、文字をたくさん書く仕事です

運転手文字を、たくさん

乗客最近は、書いたあとに、AIに直してもらうことが多くて

運転手楽になりましたか

乗客楽には、なりました。けど、書いた気が、しないことも、増えました

運転手ほう

乗客半分は、私が書いてる気がして、半分は、もう私のじゃない気がする

運転手それは、こっちの仕事と、近いですね

乗客近いですか

運転手道は私が選んでるけど、ナビに選ばされてる気もする日が、あります

カーナビの女性合成音声:「五百メートル先、左方向です」

運転手

乗客

お互いさま

運転手本山、もうすぐですね

乗客ありがとうございます

運転手メーター、思ったより、上がってないでしょう

乗客道、空いてました

運転手雨上がりは、たいてい、空きますね。みんな、家に、もう戻ってる

乗客賢明ですね

運転手私も、家にいたいです、本当は

小さな笑い声。

到着。乗客、支払いの準備。

運転手千二百三十円です

乗客千五百円で、お願いします

運転手二百七十円のお返しです

乗客ありがとうございました

運転手今日はね、お気をつけて

乗客運転手さんも、どうぞ、お気をつけて

運転手ありがとうございます。お互いさまで

乗客お互いさまで

ドアが開く。雨上がりの、湿った空気が車内に入ってくる。乗客が降りて、ドアが閉まる。タクシーは、また駅のほうへ、ゆっくり走り去っていく。街灯がアスファルトに映っている。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。登場人物・場面はフィクションです。