ケイさんは、山に登る
——憧れって、こういうことか

タケウチソウタ

ケイさんのインスタに、また山の写真が上がってた。

朝の四時とかに撮ったやつ。雲が、下にある。

ケイさん

ケイさんは、二つ上の、女子バスケ部の先輩だった人。卒業して、大学で山岳部に入った。今は、毎週みたいに山に登ってる。

現役のとき、一回だけ、合同練習で一緒になった。フリースローのフォーム、直してもらった。それだけ。向こうは俺のこと、たぶん覚えてない。

でも俺は、ケイさんのインスタをフォローしてる。

雲が、下にある

ケイさんの山の写真は、盛ってない。フィルターもかかってない。ただ、朝の山が写ってる。

雲が、下にあるんだよ。山の上から撮ると。空じゃなくて、足の下のほうに、雲がある。

キャプションも短い。「三時起き。寒い。」とか。「下山。膝、笑ってる。」とか。盛らない人だ。盛らないのに、すごいのは伝わる。

俺、あれ見るたびに、なんか、いてもたってもいられなくなる。

休み時間

今日、休み時間に、サカモトにケイさんのインスタ見せた。「これ見て、ケイさん、また登ってる」って。

サカモトは「ふーん」って言った。スマホ、ちょっとしか見なかった。

なんか、つまんなそうだった。山の話、興味ないのかな。まあいい。

もうちょっと見ててほしかったけど、サカモトは「私、山とか登らないし」って言って、自分の席に戻った。

憧れって、こういうことか

家で、またケイさんの写真を見てた。

ケイさんは、俺に「山に来い」なんて一回も言ってない。フォローしてることも、たぶん知らない。

なのに俺は、勝手に、山に行きたくなってる。あの雲の下に、自分も立ってみたい。

ケイさんは、俺に何も頼んでない。なのに。

憧れって、こういうことか。

いつか

いつか俺も、あの山に登る。今はまだ、写真を見てるだけだけど。膝が笑うところまで、行ってみたい。

……まず、靴からだな。登山靴、けっこう高いらしい。バイト、するか。

← #1「『埋め草』を押しつけられた話」
サカモト編「山には登れない」 →
目次

このページの記事はAI(Claude)を用いて作成・編集されています。タケウチソウタは架空の人物です。