編集者(匿名)による第一稿への指摘。対象:日程調整メールの修辞 #4(第一稿)/書き手:キリシマミサキ
全体要旨
第四回は、多者間調整という、シリーズで最も複雑な題材を扱っている。「皆様のご都合を踏まえ」が優先順位を表面で否定し裏で従う二段構造、という観察は鋭く、本作独自の角度として価値が高い。問題は、第三回で批評した「八つの section の業務マニュアル化」が、第四回で再び発生していること。「名前を出すか出さないか」「優先順位」「皆様の便利さ」「全員合わない時」「to/cc/bcc」「進捗共有」「透明性」と、七つの section が並ぶ。シリーズの構成癖を、批評で繰り返し指摘してきたにもかかわらず、第四回で再発している。書き手のシリーズ運用テンプレートが、八つ前後の section に強く固定化されている。
section-label:名前を、出すか出さないか/誰の都合が、暗黙に優先されるか/「皆様のご都合を踏まえ」の便利さ/全員の都合が合わないとき/cc とBCC の使い分け/関係者の温度を、保つ/調整の透明性
七つの section が並ぶ。第二回・第三回で繰り返し批判された「業務マニュアル化」の癖が、第四回でまた再発している。書き手は、批評を読んでも、シリーズの章構成を変えられない。これはおそらく、書き手のなかで「網羅的に解説する」癖が、かなり強い構造として、固定化している。
第二稿では、思い切って三つに圧縮する。「名前と理由の開示」「皆様の便利さ」「合わないときと透明性」の三 section に再構成する。to/cc/bcc の運用論と、進捗共有の段は、本シリーズの主題(メールの修辞)から逸れるので、削る。
section-label:cc とBCC の使い分け
……to は、行動を依頼する直接の相手。cc は、情報を共有する関係者。bcc は、共有しているが他の関係者には見せない受信者。
to/cc/bcc の解説は、ビジネスメールの基礎知識として有名で、本シリーズで扱う必然性が薄い。書き手は「秘書業務として知っているので入れた」可能性があるが、シリーズの主題(修辞の解剖)から見ると、ハードウェア(メール機能)の話で、文体ではない。
第二稿では、この section を丸ごと削る。to/cc/bcc は別の媒体(メール基礎本、社内マニュアル)の役割。
section-label:関係者の温度を、保つ
……調整の途中で、進捗を共有するメールを、別便で出すこともあります。
進捗共有メールという、別の種類のメールの話に発展している。本作は「日程調整メール」を扱う回なので、進捗共有メールは別の主題。第二稿では、この section を削る。
例えば、こちら側が、A様(取締役)とB様(部長)とC様(課長)との打ち合わせを調整する場合、暗黙の優先順位は、A様 > B様 > C様 になります。
役職のヒエラルキーを「取締役 > 部長 > 課長」と明示している。これは秘書業務の現場感としては正しいが、本文に堂々と書かれると、書き手の社会観として固定的に見える。役職の優先順位は、業界・組織・状況で変わるもので、こう一律に書くと、誤解を招く。
第二稿では、この具体例を削るか、「立場の高い方の都合に合わせる傾向がある」程度の抽象に。役職のヒエラルキーを直接書かない。
不満が表に出ないように、文面の中で配慮を尽くすのが、秘書業務の一つの仕事です。
結末で、「秘書業務」というキーワードを置いて、業務の役割を一段抽象化している。シリーズで毎回、結末で「定型は機能」「形式の一部」「相手の認知負荷を下げる装置」と、定型の意義を別の言い方で要約してきた。第四回でも同じパターン(「秘書業務の一つの仕事」)が再演している。
第二稿では、結末の抽象的な定義を取り、本文の最後に具体(「文面の中で配慮を尽くしながら、調整を進める」)を置くだけにする。シリーズの結末テンプレを意識的に崩す。
本作の中央テーゼ「『皆様のご都合を踏まえ』は、優先順位の存在を表面上は否定しながら、実際の動きでは優先順位に従う、という二段の構造になっている」は、本作の最大の発見で、シリーズに新しい角度を加えている。これは残して、深く掘る価値がある。
第二稿では、このテーゼを中心に据えて、他の section(運用論、ヒエラルキー、to/cc/bcc)を削ったぶんの紙面を、この観察の深掘りに使う。例えば、「皆様」が便利でありながら、それを多用すると、配慮の薄さが透ける場面、なども書き加えられる。
第四回は、「皆様のご都合を踏まえ」の二段構造、という本シリーズに新しい観察を持ち込めている。一方、第二回・第三回で繰り返し批判された「業務マニュアル化」の癖が、第四回で最も顕著に再発している。シリーズの構成癖を、第四回で本当に崩さないと、最終回(第五回)でも同じパターンに陥る。
第二稿に向けて:
シリーズ第四回として、構成癖を本気で崩す。最終回への接続のため。