A様より、B様
日程調整メールの修辞 #4 多者間調整

キリシマミサキ(秘書)

三者以上の関係者が絡む日程調整は、二者間とは別の難しさがあります。誰の都合が優先されるか、誰の名前を出していいか、全員の都合が合わなかったときにどう仕切り直すか。これらの判断が、文面の中に、暗黙に組み込まれます。

件名:◯◯の件 日程調整のご相談(再)

B様
(cc: A様)

お世話になっております。
◯◯の件、A様より◯月◯日はご都合難しいとご連絡をいただきました。
B様、お手数ですが、下記候補日でいかがでしょうか。

 第1希望:◯月◯日(◯)10:00 - 11:00
 第2希望:◯月◯日(◯)14:00 - 15:00

A様にもご都合を再度ご確認のうえ、B様のご都合と合わせて、最終確定とさせていただければと存じます。

よろしくお願いいたします。

名前を、出すか出さないか

多者間調整メールで、私が最初に判断するのは、「A様の名前を、B様への連絡の中で出していいか」です。出すと、A様の都合の事情が、B様に伝わります。出さないと、B様には、こちら側の調整の事情が見えず、こちらが「気まぐれに候補を変えている」ように見える可能性があります。

原則として、名前を出します。「A様より◯月◯日はご都合難しいとご連絡をいただきました」と書くことで、B様に対して、こちら側が候補を変えている理由が、明確になります。理由が見えると、B様も再調整に協力しやすくなります。

名前を出さない場合は、A様の都合の事情が、B様に開示すると問題になる場合(A様とB様の関係性、A様の役職や事情など)に限られます。その場合、「諸般の事情により、再度日程調整のご相談です」とぼかします。ぼかしたぶん、B様の協力を得る難易度は、上がります。

cc に A様 を入れるかどうかも、関連する判断です。cc に入れると、A様にも、B様への連絡が届くので、A様は自分の名前が出されたことを、確認できます。出されたことを確認した A様は、B様の返信を待つ立場になります。cc から外すと、A様は B様の返信を直接見ないので、こちら側が二者間で再度A様に新候補を確認することになります。実務的には、cc に入れるほうが、往復回数が減ります。

誰の都合が、暗黙に優先されるか

三者以上の調整で、表に出ないが重要な要素は、「誰の都合が暗黙に優先されるか」です。これは、関係者の役職、こちら側との関係性、調整の主導権の所在で、決まります。

例えば、こちら側が、A様(取締役)とB様(部長)とC様(課長)との打ち合わせを調整する場合、暗黙の優先順位は、A様 > B様 > C様 になります。A様の都合に合わせて、B様とC様の都合を集めにいく。A様の都合が複数ある場合のみ、B様とC様の都合を聞いて、合うものを選ぶ。

逆に、外部の取引先と、社内の部下を一緒に調整する場合は、外部の方が優先されます。「先方のご都合を最優先で」が、ビジネスマナーの不文律です。社内の部下の都合は、後回しになります。

これらの優先順位は、メールの文面では明示されません。明示すると、優先されない側に対して、失礼になります。優先順位を明示せずに、結果的に優先順位どおりに調整するのが、多者間調整の作法です。「皆様のご都合を踏まえ」と書くことで、優先順位の存在を表面上は否定しながら、実際の動きでは、優先順位に従う、という二段の構造になっています。

「皆様のご都合を踏まえ」という表現は、優先順位の存在を表面上は否定しながら、実際は順位に従う、という二段の構造を持っている。

「皆様のご都合を踏まえ」の便利さ

多者間調整で繰り返し使う表現が、「皆様のご都合を踏まえ」「全員のご都合が合う日程として」「皆様にご無理のない日程で」です。これらは、特定の誰かを優先したと書かずに、調整の結果だけを伝える便利な定型です。

使い方には、注意点があります。「皆様のご都合を踏まえ」と書いておきながら、実際には特定の人の都合だけを聞いて決めた場合、後から関係者の中で「実は自分の都合は確認されていなかった」と気づかれると、信頼を失います。書く前に、本当に全員の都合を確認しているか、または、確認していないことを承知の上で「皆様」と総称しているか、を意識する必要があります。

「皆様」を使わない代替表現としては、「ご出席予定の方々のご都合を確認のうえ」「関係者各位のスケジュールを踏まえ」などがあります。これらは、「皆様」よりも、確認対象の輪郭をはっきりさせる効果があります。

全員の都合が合わないとき

多者間調整で、よく直面するのが、全員の都合が合わない、という事態です。三人の都合の交点を取ろうとして、候補日が一つも見つからない。これは、関係者が増えるほど、頻発します。

このときの対応として、いくつかの選択肢があります。第一に、最も柔軟性の高い参加者に、別日への移動を依頼する。「お一人だけご無理なお願いとなり恐縮ですが、◯月◯日に変更いただけませんでしょうか」と、特定の人に追加の調整を依頼する。第二に、開催を後ろ倒しにする。「全員のご都合が合う日が見つからず、◯週間後の◯月◯週目で再度調整させていただけますでしょうか」と、開催時期を変える。第三に、参加者の一部を、別の機会に分ける。「全員でのお打ち合わせは別途調整するとして、まずは◯様と◯様の二者で先行してご相談いただけますでしょうか」と、会議を分割する。

どれを選ぶかは、調整の優先順位と、関係者の関係性によります。実務的には、第一の「特定の人に追加の調整を依頼する」を、相手の役職と関係性を見て選ぶことが多いです。第二の「後ろ倒し」は、案件の急ぎ度が低い場合に。第三の「分割」は、全員集合の意義が薄い場合に。

cc とBCC の使い分け

多者間調整メールでは、to / cc / bcc の使い分けが、関係性の処理に深く関わります。to は、行動を依頼する直接の相手。cc は、情報を共有する関係者。bcc は、共有しているが他の関係者には見せない受信者。

三者の調整で、A様とB様が同じ立場の場合、to:両方、cc:なし、または、to:両方、cc:同僚や関連部署、という形が標準です。A様とB様で立場が違う場合(A様が依頼者、B様が依頼を受ける側)、to:B様、cc:A様、という形で、依頼の主体を明示します。

bcc を使う場面は、慎重な判断が必要です。bcc に入れた人の存在は、to / cc の人には見えません。透明性の観点で問題になる場合があります。社内の上司に「自分が外部とどうやり取りしているか共有したい」場合に、上司を bcc に入れることがありますが、これは、上司の判断で「あとで自分の関与を表明する」かどうかが決まる、デリケートな運用です。

多者間調整でbcc を多用すると、関係者の信頼を失うリスクがあります。原則として、bcc は最小限に留め、見せたい人には正面から見せる、というのが、私の実務感覚です。

関係者の温度を、保つ

三者以上の調整が長引くと、関係者のなかに「自分の都合を聞かれていない」「自分の意見が反映されていない」と感じる人が、出てきます。この感覚を放置すると、最終的な打ち合わせの場で、参加意欲が下がります。

調整の途中で、進捗を共有するメールを、別便で出すこともあります。「現在、◯様とのご都合確認中です。◯日中に確定のご連絡をさせていただきます」と、関係者全員に進捗を伝える。これは、調整に時間がかかる場合の、関係性の温度維持のための作法です。

進捗共有を入れすぎると、メールの数が増えて、相手の認知負荷が上がります。入れなさすぎると、相手は調整の状況が見えず、不安になります。中央のどこかに、適切な頻度の進捗共有を、置く判断があります。

調整の透明性

多者間調整メールの一番の難しさは、調整の透明性と、関係性の配慮の、両立です。完全に透明にすると、誰の都合をなぜ優先したか、が全員に見えて、優先されなかった側に不満が残ります。配慮を優先して隠しすぎると、関係者の中で疑心暗鬼が生まれて、信頼が下がります。

標準的なバランスは、「調整の理由は明示する、優先順位は明示しない」あたりです。「A様より◯月◯日はご都合難しいとご連絡をいただきました」のように、調整が必要になった理由を明示する。一方、「A様の都合を最優先で組ませていただきました」のように、優先順位を明示しない。前者は協力を引き出すために必要、後者は配慮のために必要。

多者間調整は、結局のところ、関係者全員が「自分は配慮された」と感じる結末に落ち着くのが、理想です。実際には、誰かが多少の不満を抱えることもあります。それでも、不満が表に出ないように、文面の中で配慮を尽くすのが、秘書業務の一つの仕事です。

——補記:この第一稿は公開後に辛口レビューを受け、第二稿で書き直しました。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。本文中のメール例は構文を再現した架空合成例で、特定企業・個人への言及ではありません。