新人の、配属(第二稿)
四月、患者に会わない部署に来た人へ

ヤエガシモネ(42歳・病院の滅菌技士20年)

四月、中央材料室に新人が来た。案内係に連れられて洗浄機の通路を歩いてくる。配属初日、その子は小さな声で言った。「病院に就職したのに、患者さんに会わない部署なんですね」。二〇〇六年、二十二歳でここに入った日、私も同じことを思っていた。地下の、誰の顔も見えない部屋。

最初に教えたのは、数を数えることだ。事故の話はしない。ただ、出した数と戻った数を、毎日いっしょに数えさせる。鉗子六本、剪刀二本、鑷子四本。その子は最初、表の数字を目で追うだけで、指が動かなかった。指でなぞれ、と言った。一本ずつ触って、声に出せ、と。一本の重さは、話して渡せるものではない。

洗浄機のラックの組み方には癖がある。私は内腔のある器械を奥の段に、刃物は刃を下にして手前に立てる。その子のラックは、剪刀が刃を上にして寝ていた。これだと水流の影に入って、関節の溝が洗い残る。やり直させる。三度目に、ようやく刃が下を向いた。

名前は、似た二本を並べて教える。ペアン鉗子とコッヘル鉗子。光にかざして先端を突き合わせると、コッヘルの先には鉤のような爪が一対ある。ペアンにはない。先端の角度も違う。組織を掴む鉗子と、血管を留める鉗子。新人の目はまだ追いつかず、二本を裏返しては見比べていた。

先週、その子が初めて一人で虫垂炎のセットを組み上げた。表をなぞりながら、一つずつ置いていく。組み終わって、ダブルチェックをした。表の声を出し、その子が器械を指さして読む。「ペアン、六本」。読み合わせて、止まった。表は五本。一本多い。爪のないペアンが五本のはずの段に、鉤の見えるコッヘルが一本、まぎれて立っていた。剪刀のセットから移ってきた一本だった。

叱らなかった。「もう一回、数えてみよう」とだけ言った。その子は段の鉗子を一本ずつ取り、先端を光にかざした。五本目で手が止まる。鉤の爪を見て、自分でコッヘルを抜いた。私は何も言わなかった。多い、と数が言った。

チェックのあと、その子がぽつりと言った。「この仕事、誰にも気づかれないですね」。私は少し考えてから答えた。「気づかれないことが、うまくいっている証拠なんだよ」。その言い方を選ぶまでに、二十年かかった。それきり、私たちはまた次のセットの表を開いた。出した数と、戻る数。明日もここで数える。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。第一稿への辛口レビューを経て書き直した第二稿です。