タケウチソウタ(16歳、高校2年)
メルカリでずっとSwitchを探していた。新品は高い。型落ちで十分。検索フィルターをかけ、画面を滑らせる指が止まった。28,000円。写真には液晶の隅にわずかな埃、本体裏には細かな擦り傷が見えた。それ以外は問題なさそうだった。説明文には「使用期間半年、初期化済み」とある。購入ボタンを迷うことなくタップした。
数日後、宅急便が届いた。薄茶色の段ボールを開けると、プチプチに包まれたSwitchの箱が現れる。緩衝材を剥がし、中の本体を取り出すと、ひんやりと手に馴染んだ。保護フィルムを剥がし、充電器を挿し込む。数秒後、漆黒の画面にNintendoのロゴが白く浮かび上がった。コントローラーを握り、友達とマリオカート。夜遅くまで、ハンドルを握る両手にはたしかに振動が伝わっていた。
三週間ほど経った、ある日の夕食時。学校から帰ると、食卓に父が座っていた。いつものように漫画を読んでいるわけではない。顔は硬い。「警察から電話があった」父の言葉に、箸を置いた。「Switchのことだ、と」。差し出されたスマホを取る。電話の向こうの、落ち着いた声の警察官は、Switchの背面にあるシールのシリアル番号を尋ねた。言われるままに読み上げる。受話器の向こうで、わずかな空白があった。その間、カレーの匂いが急に重くなった。
「そのSwitchは、三週間ほど前、深夜のコンビニ強盗事件の被害品と一致します」。リビングの床に置かれた、見慣れた赤いコントローラーが目に入った。それはもう、僕が遊んだあのゲーム機ではない。薄汚れた、別の何か。翌日、父と警察署へ。金属の扉を開けて進むと、正面に木のカウンターが横たわる。奥に通されたのは、パイプ椅子が四脚置かれた、窓のない狭い部屋だった。僕のメルカリアカウント名、取引履歴、出品者の評価。刑事は淡々とメモを取っていた。その間、隣の部屋から微かに聞こえる事務的なタイピング音が、耳に張り付いた。
結局、Switchは警察に預けることになった。被害者のもとに返還されるらしい。28,000円は戻ってこない。署を出て、アスファルトの駐車場を見下ろす。手の中にあるのは、スマホだけ。それまで僕の部屋にあったものが、今は別の場所で、持ち主の記憶から切り離された物証になっている。あのSwitchが手元を離れてから、僕の部屋の一角は、空洞のままだ。
法律って、そういうものがあるんだよ
父は僕の問いに、そう答えた。その言葉の響きは、この三週間の全てを無かったことにする、冷たくて固い壁のように感じられた。安く手に入れたつもりのゲーム機は、ただの「モノ」ではなく、何かを物語る「証拠」だった。その事実だけが、しつこく残る。