第二稿(第一稿、研究室4人による建設的批判を経て書き直した版)
三限のあと、移動教室。理科室から教室に戻る、廊下、四分。スリッパの底が、リノリウムに、こす、こす、と当たる。
左にミナ、右にジュリ、後ろにリオ。
「お腹、空いてきた」とジュリ。
「あと、五十分」
「五十分、長い」
ミナがお腹を、ちょっと押さえた。
「今日のお弁当、なに?」とジュリがミナに聞いた。
「卵焼きと、ウインナーと、餃子」
「餃子!」
「昨日の余り」
「いいねー」とリオ。
「わたしは、自分で詰めただけ」とジュリが続けて言った。
「えー、すごい」
「すごいこと、ない。冷凍食品と、ご飯、だけ」
「それ、お弁当って言うんだ?」とミナが笑った。
「言う、たぶん」
リオが、ふっと言った。
「うちは、たまに、父が作る」
「父?」
「うん。パンと、ハムと、チーズ。それだけ」
「シンプル」
「シンプル」
「ハナは?」
「いつもの、たぶん」
「中身は?」
「ふたを開けるとき、はじめて、見る」
「えー」
「毎朝、母が作ってくれてる、それは、知ってる。けど、中身は、ふたを開けるまで、わからない」
「楽しみだね、それ」とジュリ。
「楽しみ、なのかも」
スリッパの音が、まだ続いている。
教室の戸が、もうすぐそこ。
「お腹、もう、限界」とミナ。
「あと、四十八分」とジュリが時計を見て言った。
「四十八」
戸の前で、ふっと、見えた。ミナの餃子。リオのパン。わたしの、まだ閉じている、ふた。
教室の戸が開いた。それぞれ、別の席に、散っていった。
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本作は山田花・移動教室の雑談シリーズ #5 の第二稿。研究室メンバー4人の建設的批判を受けて書き直し。具体的な変更点:(1)「○○は?」型問答を1回(ミナへの問い、最後の花への問い)に圧縮、ジュリ・リオは自分から話す形に、(2)ミナの「百個」「家族の配分」を全削除(5作連続のキャラ固定化を断ち切る)、(3)リオの「デンマーク式、らしい」のメタ修正を削除、「パンと、ハムと、チーズ。それだけ」だけに、(4)ジュリの「作る・詰める」メタ問答を圧縮、「冷凍食品と、ご飯、だけ」「言う、たぶん」だけに、(5)花の「見てない」を「ふたを開けるとき、はじめて、見る」のもう少し具体的な像に、ジュリの「楽しみだね、それ」で軽く受け流す(「贅沢」「贅沢、なのかな」のフラットさを削除)、(6)「お腹の音、鳴ってない?」を削除、(7)結語の「楽しみ」を「お腹、もう、限界」「あと、四十八分」(時計を見る具体動作)に変更、(8)内的フラッシュを4→3要素に圧縮(「ジュリ」抜き、ミナの餃子・リオのパン・わたしのふた)、修飾を削って名詞だけ。花のシリアス系(花のノート)と同一人物。