議論から、降りる
マネー見出しの解剖 #4 住宅ローン 第二稿

タカハシセイイチ(家計アドバイザー・CFP・1級FP技能士)

住宅ローン関連の煽り見出しに、独特な型がある。それは、結論を出さない型だ。「持ち家か賃貸か、永遠のテーマ」「決着のつかない議論、再燃」。今回はそのなかの「永遠の議論」の構文だけを扱いたい。残りの典型——「破綻する家計」「変動か固定か」「後悔する人の共通点」——は、それぞれ別の構文を持っているが、本回では深入りしない。

議論を、永遠化させる側

「永遠の議論」と銘打たれた住宅ローン記事を、何本か並べて読むと、ある共通点に気づく。記事のタイトルや冒頭が「結論」「答え」「最適解」を予告しているにもかかわらず、本文を読み進めると、結論は明確には書かれていないことが多い。条件次第、人それぞれ、地域による、ライフプランによる、と注釈が並び、最終的には読者が自分で判断する形に着地する。

記事媒体の側の事情として、これは合理的な選択になる:結論を出した瞬間に、その記事の役割が終わって、読者が次の住宅ローン記事を読まなくなる。「永遠の議論」と銘打つことで、媒体は同じテーマで何本でも記事を書ける。年に何度か再燃して、何度かまた書ける。永遠化させる側にとって、永遠であるほうが、書き続ける動機が保たれる。

議論を、永遠化させる読者の側

媒体側の動機だけで「永遠化」を説明するのは、片手落ちだ。読者の側にも、議論を永遠化させたい動機がある。家計アドバイザーとして、住宅ローンの相談を受けるなかで、私が観察してきたのは、読者(相談者)が、結論を出さないまま情報を読み続けることに、ある種の安堵を感じる場面だ。

結論を出すと、責任が生じる。買う、と決めた瞬間に、その家を選んだ責任が、本人に乗る。借りる、と決めた瞬間にも、家賃を払い続ける責任が乗る。決めないでいるあいだは、責任が浮いている。浮いた状態のまま、いろいろな記事を読んで「いま勉強中です」と言える。勉強中、というラベルが、判断保留の正当性を支える。

「永遠の議論」は、この読者の判断保留欲求と、媒体の永続化動機の、両方の合流地点に置かれている。両方の側が、議論が永遠であることに利益を持っている。永遠であるほど、議論は長く続き、媒体は記事を書き続け、読者は判断を先送りする。先送りされた判断のあいだに、住宅環境は変わり、子どもは大きくなり、本人は年を取り、ローンを組める年齢の上限に近づいていく。永遠の議論のなかで時間だけが減っていく、という構図に、誰も声を上げにくい。

議論を永遠化させているのは、媒体だけではない。判断したくない読者の側も、そこに加わっている。

計算自体は、長くない

家計アドバイザーの実務では、「持ち家か賃貸か」の判断のための計算は、それほど長くかからない。物件価格、頭金、ローン金利、ローン期間、固定資産税、修繕費、火災保険、管理費、団信、想定居住年数、賃貸の家賃水準、将来の売却見込み額。これらをエクセルか紙に入れて、二つのシナリオの三十年間の総支出を比較する。三十分ぐらいで、おおよその答えは出る。

三十分の計算で答えが出るのに、何百本もの「永遠の議論」記事を読み続けるのは、時間の使い方として、釣り合っていない。釣り合っていないのに、読者は記事のほうを選ぶ。記事のほうが、判断を必要としないからだ。計算は、結果を見て判断する作業を強要する。記事は、判断を読者に強要しない。読者は、楽な方を選び続ける。

選び続けた結果、読者は、自分の家計の数字を一度も見ないまま、住宅に関する膨大な情報だけを蓄積する。蓄積された情報は、本人の判断には、ほとんど寄与しない。情報を蓄積している実感だけが、判断保留の正当性として機能する。

「破綻する家計」の方向違い

関連して、「破綻する家計、その始まりは住宅ローンだった」型の見出しにも、軽く触れておく。実際にローン後の家計が破綻する事例は存在するが、その原因のほとんどは、ローン契約そのものより、契約後の家計の急変(収入減、離婚、健康問題、教育費の予想超過)にある。「住宅ローンが破綻の始まり」と書くと、ローンの是非が問題のように見えるが、実際には、ローン後の家計運営のほうが問題の中心にある。原因と症状の入れ替えが、見出しのなかで起きている。

これも、本回の中心ではない。中心は、永遠の議論から、自分の机のところで降りる、という話だ。

机のところで止める

住宅ローンの判断は、定期的に見直す必要があるので、一度きりの計算で終わるわけではない。金利見直しのタイミング、繰上げ返済の検討、団信の保障内容の確認、住み替えの検討、退職後の住居の検討。ライフステージごとに、計算をやり直す。やり直すたびに、「永遠の議論」の議論場に戻るのではなく、自分の数字を、自分の机のところで、もう一度入力する。

入力すると、答えはまた出る。出た答えを、また紙に書いて、しまう。永遠の議論を、自分の机のところで止める。止めたあとに、何をするかは、その人の数字で決める。本回で書ける最小限のことは、それだけだ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。本文中の見出し例はすべて構文を再現した架空合成例で、特定媒体への言及ではありません。住宅ローンの判断は、税理士・FPなど複数の専門家にご相談ください。