「いざ」を、ほどく
マネー見出しの解剖 #3 保険 第二稿

タカハシセイイチ(家計アドバイザー・CFP・1級FP技能士)

保険関連の煽り見出しは、「入ってはいけない保険」と「いざという時、本当に役立つ保障」のように、危機と確信が一つの記事のなかで同居している型が多い。今回はその中で、「いざという時」というフレーズに集中して、解いてみたい。架空の合成例で言えば、こういうものだ:「入ってはいけない保険、入るべき保険」「いざという時、本当に役立つ保障とは」「医療保険、本当はいらない説の真偽」。今回扱うのは三つ目ではなく、二つ目だ。

問い返してみると

家計アドバイザーとして相談を受けるとき、「いざという時のための保険を見直したい」と言われたら、私は逆に聞き返すことがある。「『いざという時』というのは、どんな時を、お考えですか」。

返ってくる答えは、相談者によって違う。がんの場合を考えている方もいるし、自分が亡くなった場合の家族のことを考えている方もいる。介護や、長期の入院や、配偶者の死亡を念頭に置いている方もいる。「いざという時」を一語で考えていた相談者の頭のなかが、問い返されたあとで、二つや三つの違うシーンに分かれる。問い返さないと、その違いは、保険商品の販売の段階まで、保留される。保留されたまま契約された保険は、本人の「いざ」に合っているかどうか、検証されないままになる。

「いざという時」一語のなかには、相談者ごとに違うシーンが、まだ分かれずに入っている。

必要保障額という、地味な作業

「いざ」を分けたあと、家計アドバイザーの実務では、必要保障額の計算をする。亡くなった場合の家族の家計を、子どもの独立までと配偶者の老後まで、時系列で並べる。公的年金や配偶者の収入や貯蓄や住宅ローンの団信や教育費の残りなど、いくつかの数字を並べると、その人にとっての「いざ」に必要な保障額が、おのずと出る。

この計算は、地味だ。地味なので、見出しにならない。「あなたの必要保障額は◯◯万円かもしれない」と書いた記事は、煽り記事として失敗する。具体性が高すぎて、読者が「自分には当てはまらない」と離れていく。煽り見出しは、具体に近づきすぎず、抽象すぎず、ちょうど読者が「自分のことかも」と感じる位置に、慎重に置かれている。「いざという時」は、その絶妙な位置にいる。

記事と広告のあいだのグラデーション

もうひとつ、保険記事に特有の事情として、書いておきたいのは、記事と広告のあいだに、はっきりとした境界線がないことだ。マネー雑誌や保険比較サイトには、「FPが解説」「専門家が暴露」と銘打った記事が並ぶが、執筆者の所属が、保険代理店や保険販売会社の関連企業であるケースが、相当な比率である。

私自身、独立系FPとして、商品販売の手数料は取らずに相談料だけで活動しているが、業界全体ではグラデーションがある。完全に独立して手数料を一切取らないFPは、業界の比率としては多くない。記事の末尾に小さく書かれた「※本記事は◯◯生命の協賛により制作されました」「広告」「PR」「提供」のラベルの有無を確認する習慣がないと、独立記事と広告の区別がつかない。確認しても、グラデーションは残る。グラデーションの濃い側にある記事は、独立記事の体裁を借りた、長尺の保険広告として機能している。

「入ってはいけない/入るべき」の動線

「入ってはいけない保険、入るべき保険」のような対比型の見出しは、対比のあとに「入るべき」の側を提示する設計になっている。記事を読み終えると、「入ってはいけない」のリストにいま自分が加入中の保険が含まれていて、「入るべき」のリストに、まだ入っていない保険が紹介される。読者は、いま入っている保険を解約して、紹介された保険に乗り換える、という行動に向かう動線を、記事のなかで歩かされる。

解約と乗り換えは、保険販売の現場では、新規契約の手数料が販売側に入る形で報酬につながる。読者にとっては、解約返戻金の損失や、新規契約時の年齢上昇による保険料の上昇など、必ずしも有利ではない結果が混じる。私が保険見直しの相談を受けたときに、最初に確認するのは、現在加入中の保険の解約返戻金(特にいま解約した場合の元本割れ額)と、加入時の年齢、保険期間、保障内容だ。これらの数字を出してから、本当に乗り換えが本人の利益になるかどうかを判断する。判断の結果、「乗り換えないほうが得」と結論づけることが、たぶん半分以上はある。

「医療保険、本当はいらない説」

もうひとつ最近よく見るのが「医療保険、本当はいらない説の真偽」型の見出しだ。日本の公的医療保険(健康保険)が手厚いので民間の医療保険は不要、という意見と、先進医療や差額ベッド代や入院中の収入減を考えると必要、という意見が両論ある。

両論があるので、私は実務では、相談者ごとに分けて判断している。会社員で健康保険組合の付加給付があり、貯蓄が一定額以上ある方には、医療保険は基本的に不要と説明する。自営業で国民健康保険のみ、貯蓄が薄い方には、最低限の医療保険を提案することがある。「真偽」と一語で結論を装う見出しは、この相談者ごとの違いを消す。両論を消し、片方の答えを「真」として提示し、もう片方を「偽」として退ける。退けられた答えのなかに、別の相談者にとっての正解が、混ざっている可能性がある。

保険証券を、机から出す

「いざ」を、自分の語彙で言い換えてみることが、本回で書ける最小限の話だが、もうひとつ、もう少し具体的な行動を書いておく。それは、いま加入している保険の保険証券を、机の引き出しから出してみることだ。多くの方が、自分が今どんな保険に入っているかを、正確に把握していない。証券を出して、保障の内容と、保険期間と、保険料の合計と、解約返戻金の現在額を確認する。確認するだけで、煽り見出しの「いざという時」一語の抽象が、自分の保障内容のなかで、どこまでカバーされているのか、おおよそ見える。

見えると、見えない煽りに動かされなくなる。本回で並べる手順は、それだけだ。

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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。本文中の見出し例はすべて構文を再現した架空合成例で、特定媒体への言及ではありません。保険の加入・見直しの判断は、複数の独立した専門家にご相談ください。