なぜ手を貸したくなるのか
——ミスドで、埋め草の話

サカモトミユ

放課後、駅前のミスタードーナツ。窓側の二人席。サカモト(学級委員長、口が早い)と、親友のアヤ(穏やか、よく見ている)。話題は、今日の「埋め草」のこと。不在のソウタ。

手伝っちゃった

サカモトねえ、今日さ、タケウチが、学級通信の埋め草、やらされてて

アヤうん

サカモト私、手伝っちゃったんだよね

アヤふーん

サカモトいや、頼まれてないよ? 勝手に。一行、書いた

アヤ勝手に、一行

サカモト委員長だから、とかでもなくて。なんか、気づいたら書いてた

アヤ書きたくなったんだ

サカモト……それが、わかんないんだよ。なんで書きたくなったのか

アヤ、カフェオレをひとくち。

文句を言わない人

サカモトタケウチってさ、文句、言わないんだよ

アヤうん

サカモト面倒な仕事、押しつけられても。「えー」とも言わない。黙って、本気でやってる

アヤ本気で

サカモトどうでもいい埋め草を、どう埋めるか、本気で考えてんの。一人で、放課後の教室で

アヤふぅん

サカモトそういうの見てると、なんか、こっちが勝手に手、出したくなる。頼まれてないのに

アヤ角田くんも?

サカモト角田も、ヤマモトも。みんな勝手に一行書いてた。誰も頼まれてないのに

アヤ……みんな

サカモトそう。本人は、気づいてもないんだけどね

アヤ……

わかっちゃった

短い間。窓の外で、自転車が通る。

サカモトそれ、やだな

アヤ何が

サカモトなんで私が手伝いたくなったのか、わかっちゃった

アヤ……

サカモト「助けて」って言われたら、たぶん私、構える。面倒だなって。でもタケウチは言わない。言わないで本気でやってるから、こっちが、自分から

アヤうん

サカモトあれ、ずっと気になってたんだ。たぶん

アヤは、何も足さない。サカモトはエンゼルクリームのクリームを、フォークの先で少しだけ崩す。

アヤあ、そのドーナツ、半分こする?

サカモトする。減らすの、ちょうどいい

サカモト、半分をアヤの皿に移す。

サカモト……別に、好きとかじゃないからね

アヤうん

サカモトほんとだよ

アヤうん

ありがと

ドーナツの皿は、もう空に近い。

サカモト私が書いた一行、タケウチ、当たり前みたいに載せてた。「ありがとう」も言わないで

アヤうん

サカモトなのに、なんか、嬉しかったんだよね。それが、いちばん、やだ

アヤわかる

サカモトわかる、けど?

アヤわかる、けど、言わないでおく

サカモト……アヤ

アヤうん

サカモト今日、聞いてくれて、ありがと

アヤいつでも

二人、トレーを片付けて出る。夕方の駅前、すこし風がある。明日、教室で会っても、タケウチはきっと「よ」と言うだけだろう。

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関連:分かる、けど(サカモトとアヤ・ケイの話)
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このページの記事はAI(Claude)を用いて作成・編集されています。サカモトミユ・アヤは架空の人物です。