分かる、けど
ミスドで、サカモトと親友

五月の夕方、駅前のミスタードーナツ。窓側の二人席。サカモト(高校二年、気が強くて口が早い)と、親友のアヤ(穏やか、よく見ている)。サカモトはエンゼルクリーム、アヤはオールドファッション。カフェオレが二つ。話題には、不在のソウタ(同じクラスの男子)と、不在のケイ(ソウタが憧れている年上の大学生)。

ミスドで

サカモトちょっと聞いて

アヤうん

サカモトソウタって、まじで、最近

アヤうん

サカモトケイさん、ケイさん、ケイさんなんだよ

アヤふぅん

サカモト今日もさ、休み時間に、私の前で、スマホ出してきて

アヤスマホ

サカモトケイさんのインスタのストーリー、見せてきた

アヤ見せてきた

サカモト「ねえ、これ見て、ケイさん、また登山の写真上げてる」って

アヤふーん

サカモトしかも目、キラキラしてんの、ソウタの

アヤ目、キラキラ

サカモトいやキラキラっていうか、もう、推し見てる目

アヤ推し

サカモトね? ソウタ、推し活じゃん、これ

アヤ推し活、ね

アヤ、オールドファッションをひとくち。コーヒーの音。

ソウタとケイ

サカモトケイさんって、別に、そんなに、すごくなくない?

アヤ……そうかも、知らんけど

サカモト登山なんて、誰でも、行けばできるじゃん

アヤ装備、いるけどね

サカモトあー、装備はいるか

アヤお金もかかるしね、装備

サカモトあー、お金、ね、ソウタ、お小遣いケイさんに合わせるとか言い出さないかな

アヤそこまでは

サカモトそこまで行ったら、もう、終わりだから

アヤ終わり、ね

短い間。窓の外で、自転車が通る。

サカモト大体さ、ソウタって、にぶい

アヤにぶいよね、男子は

サカモト男子全般じゃなくて、ソウタが

アヤあー、ソウタくん、ね

サカモト私が、ほら、いつも、なんか、話しかけてんのに

アヤ

サカモトふつう、気づくでしょ

アヤ気づかないんじゃない?

サカモト気づかないって、何が

アヤ……まあ、男子、気づかないことが、多い

サカモト……

サカモトそうかも

アヤ

別に、好きとかじゃないけど

サカモト、カフェオレを飲む。一瞬、声が小さくなる。

サカモト別にさ、私

アヤうん

サカモトソウタのこと、好きとか、じゃないんだよ?

アヤうん

サカモトただ、なんか、感じ悪いなって、思っただけ

アヤうん

短い間。アヤは、何も足さない。サカモトはエンゼルクリームの生クリームを、フォークの先で少しだけ崩す。

アヤあ、そのドーナツ、おいしい?

サカモトえ? あ、まあまあ

アヤクリーム、多くない?

サカモト多い、めっちゃ多い

アヤ私、ちょっと、もらっていい?

サカモトいいよ、半分こしよっか

アヤいいの?

サカモトいいよ、減らすの、ちょうどいい

サカモト、フォークでエンゼルクリームの半分を、アヤの皿に移す。

アヤありがと

サカモトいえいえ

アヤで、明日のテスト、勉強した?

サカモトしてない

アヤ私もしてない

サカモト一緒に焦ろう

アヤ焦ろう

小さく笑う。窓の外、夕日が斜めに入ってくる。

サカモトあ、ねえ、私の LINE、既読つかないんだよね、ソウタに送ったやつ

アヤえっ、そんなのも送ってんの

サカモトえっ、いや、なんか、教科書貸してって、それだけ

アヤふーん

サカモト別に、なんか、教科書だよ?

アヤ教科書、ね

サカモト既読、つかないんだよ、丸一日

アヤ男子、LINE、開かない子、いるよね

サカモト開かないんだ

アヤ開いて返さない、よりは、ましじゃない?

サカモトあ、まあ、ましか

アヤ

サカモトましだね

ありがと

短い間。サカモト、ふっと、言葉を探す。

サカモトアヤ

アヤうん

サカモトありがと

アヤ何が

サカモト何かは、分かんないけど

アヤいつでも

サカモトいつでも

ドーナツの皿は、もう空に近い。カフェオレも、底のほう。

アヤそろそろ、出る?

サカモト出よっか

アヤ駅まで、一緒に行ける?

サカモト行こう、当然

二人、立ち上がってトレーを片付ける。ドアを出ると、夕方の駅前、すこし風がある。並んで歩く。

サカモトねえ、明日も、ミスド?

アヤ明日は、テスト、終わったあとね

サカモトあ、そっか、明日、テストだ

アヤ私たち、まだ、勉強してない

サカモトあー、そうだ

アヤ焦ろう

サカモト焦ろう

二人の影が、夕方の歩道に長く伸びる。改札の前で「またね」と言って別れる。サカモトは家のほうへ、アヤは反対方向、塾のほうへ歩いていく。背中合わせの距離が、ゆっくり長くなる。

続編:いつでも(ひと月後、学校帰りの住宅街、視点反転)
過去編:ミユがサカモトだったときのこと(アヤの独白、中学時代の出会い、「ミユ」呼びと「いつでも」の起源)
← 関連:サカモトミユの日記#1(同じ人物のひとり語り、インスタのプロフィールの話)
ネタばらし:『分かる、けど』の設計の核——気づかないふりの二重構造、その作法
← 関連:会話劇五景——シリーズの裏の狙い(六作目から振り返るシリーズ案内)
← 関連:お弁当、温めますか(深夜のコンビニ、店員と常連客)
← 関連:持ってきな(連休最終日の朝、実家の縁側)
← 関連:葉桜のあとで(連休明け月曜の早朝、犬連れの二人)
← 関連:お互いさま(連休最終日の深夜、運転手と乗客)
← 関連:同じおにぎりを(連休最終日の昼、大学生二人)
← 関連:コメダで、台湾の話を聞いた日(ソウタの別の場面)
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このページの記事はAI(ChatGPT)を用いて作成・編集されています。登場人物・場面はフィクションです。