ソノダマリ(高校パンフレット事情:カワセトモコ)
前回、偏差値を一段ずつ降りた。70台のポエム不在から30台の「居場所」まで。今回は視点を変える。書く側ではなく読む側——15歳の目で、パンフレットはどう見えているのか。
大人は「閑静な住宅街」を笑える。匂わせ暗号#1で解読したように、「閑静」の裏に「不便」が隠れていることを経験で知っているから。何度もチラシを見て、何度も実物とのギャップを経験し、暗号を学習してきた。
15歳はその経験がない。
高校のパンフレットを手に取るのは、多くの場合人生で初めての「広告を読んで重大な決断をする」経験だ。それ以前に読んだ広告はせいぜいお菓子やゲームの広告で、騙されても損害は数百円だ。しかし高校選びは3年間の人生がかかっている。
カワセ:「進路面談で『この学校、パンフレットがすごく良かったから行きたい』と言う子がいる。私は聞くの。『どこが良かった?』って。すると『雰囲気がいい感じだった』と返ってくる。雰囲気——つまりポエムと写真の印象だけで選ぼうとしてる」
カワセは進路面談で、生徒にパンフレットの逆読みを教えていたという。
「まず聞くの。『このパンフ、何が書いてある?』。生徒は『個性を大切にする学校です』って答える。次に聞くの。『じゃあ、何が書いてない?』」
これはマンションポエムS1#13の「負の空間」と、匂わせ暗号#4の「書いてないものが弱点」を、15歳向けに翻訳した手法だ。
「進学実績が書いてない」「部活の成績が書いてない」「卒業後の進路が書いてない」——生徒が自分で空白を発見する瞬間がある。そのとき、パンフレットの印象が変わる。「雰囲気がいい」から「何かが欠けている」に。
カワセ:「全部を疑えとは言わない。でも『書いてあることだけが全部じゃない』ということは、15歳にも理解できる。それだけで十分」
15歳は経験不足で暗号を見抜けない。では親はどうか。カワセの答えは意外だった。
「親は親で、別の弱点がある。大人だから広告のトリックはある程度見える。でも我が子のことになると、冷静さを失う」
特に「面倒見がいい」という言葉に、親は弱い。子供が中学で成績が振るわなかったり、友人関係で苦しんだりした場合、「面倒見のいい学校」は魔法の言葉になる。「この学校なら、うちの子を見てくれる」。
しかし「面倒見がいい」の実態は学校によってまったく違う。教員一人あたりの生徒数が少ないだけかもしれない。それは「面倒見がいい」のではなく、単に「定員割れで人が少ない」のかもしれない。
マンションポエムS2#7の求人広告で、タカダユウスケが言った言葉を思い出す。「分析できることが身を守る」。親にも、パンフレットの分析力が必要なのだ。
前回、偏差値60台の「合格者数」に暗号があることを示した。15歳にもわかる形で、解読のポイントをまとめてみる。
パンフレットの数字を読む3つの問い
これは匂わせ暗号#3(面積の暗号)の「数字の定義を問え」と同じだ。不動産の「専有面積70㎡」が壁芯か内法かで実質が変わるように、高校の「合格者128名」も定義によって意味が変わる。
カワセに聞いた。「今の中学生は、本当にパンフレットで学校を選ぶの?」
「パンフだけじゃないわね。SNS、口コミサイト、YouTubeの学校紹介動画。でもパンフは最初の入口として今も機能してる。特に保護者が最初に手に取るのがパンフ。説明会に行くかどうかを決めるのがパンフ」
SNSの口コミにも暗号はある。しかしそれは別のシリーズの話になる。今はパンフレットに集中しよう。パンフレットが「最初のフィルター」として機能している限り、そのポエムを読む力には価値がある。
15歳に暗号解読のすべてを教えるのは無理だ。四原理も変装の型も、大人が何十回も広告を読んで蓄積した知識だ。
しかしカワセが進路面談で教えていたことは、15歳にも伝わる。
「書いてあることだけが全部じゃない。
書いてないものは何かを、考えてみよう。」
この一行は、マンションポエムの「負の空間」(S1#13)であり、匂わせ暗号の「書いてないものが弱点」(#4)であり、そして15歳が最初に手にする広告リテラシーの種だ。
種は小さくていい。3年後、18歳で大学のパンフレットを読むとき、その種は育っている。さらに後、求人広告を読むとき、マンションのチラシを読むとき——「書いてないものは何か」と問う力は、一生使える。