「いろいろ、ある」の、向こう側(v2)
啓進ゼミナール人事の、佐久間ゆり子(53歳)・書き直し

第二稿(第一稿研究室4人による建設的批判を経て書き直した版)

佐久間ゆり子。五十三歳。啓進ゼミナール、人事担当、二十年目。神奈川の駅前で展開する塾チェーン。スタッフは、四十人。女性は、十六人。半分には、届かない。

うちの最初の女性管理職は、わたしだった。十二年前、四十一歳のとき。以来、女性管理職は、二人にしか、増えていない。

同業者交流会の、立ち話

去年の春、塾業界の合同研修で、進学塾アスターの佐藤先生と、休憩時間に立ち話した。

「アスターさんは、女性スタッフ、何人いらっしゃいますか?」と、わたしは聞いた。

「私、一人です」

「……一人」

「それは……いろいろ、あるでしょうね」

そう言って、わたしは、佐藤先生の名刺を、もらった。「何かあったら、相談してください」と、付け加えた。

そのあと、佐藤先生から、連絡は、来なかった。

啓進にも、別のかたち

うちには、佐藤先生のような「一人だけ」の問題は、ない。十六人いる。

けれど、先月、若手の女性講師が、退職届を出した。理由は、書かなかった。わたしは、引き止めなかった。引き止められる根拠を、わたしは、用意できなかった。

啓進に、入った新人

今年の春、啓進に、新しい女性が、入った。三十代前半、教育系の前職。

書類を見て、わたしは、ちょっと、止まった。前職の塾名が、進学塾アスターだった。

「あれ、アスターさん? 内定、辞退されませんでしたか?」と、面接で、わたしは聞いた。

「あの面接の、ですか? はい、辞退しました。ちょっと、いろいろ、あって、こちらに」

「そうだったんですね」

わたしは、佐藤先生の名刺を、机の引き出しから、出して、見た。

廊下で、すれ違ったとき

採用が決まって、彼女が入社して、二週間目。廊下で、すれ違った。

「アスターさんの面接、なぜ辞退されたか、聞いてもいいですか」と、わたしは、立ち止まって、聞いた。

「所長さんが、面接の最後に、『うちは女性スタッフは佐藤さん一人なんですよ』って、言ったんです。それで、覚悟が要るな、と感じて、辞退しました」

「あー」

「佐藤先生、いまも、お一人ですか?」

「最近、二人になったらしい、と聞きました」

「そうなんですね」

彼女は、それ以上、何も、言わなかった。すれ違って、別の方向に、歩いていった。

下書き、保存

その日の夜、わたしは、自分の机で、メールの下書きを、開いた。

宛先:佐藤紗英子先生。

件名:お元気ですか。

本文:あれから、いかがですか。

下書きを、保存した。送信は、しなかった。

来週も、たぶん、送らない。

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本作は『「いろいろ、ある」の、向こう側』の第二稿。研究室メンバー4人の建設的批判を受けて書き直し。具体的な変更点:(1)結語のキメ画「『いろいろ、ある』を、わたしは、自社で、生きている。佐藤先生も、自社で、生きている」を完全削除、(2)自社の数字(管理職12人中2人、3年で4人、復帰1人)を「うちの最初の女性管理職は、わたしだった。十二年前、四十一歳のとき。以来、女性管理職は、二人にしか、増えていない」の佐久間自身の歴史に置換、(3)辞退応募者の「悪意は、なかった、と思います」セリフ削除、(4)「人数が多いから、孤立はしにくい。それだけ、かもしれない」のメタ解説を「先月、若手の女性講師が、退職届を出した。理由は、書かなかった。わたしは、引き止めなかった」の具体例に置換、(5)佐久間の「打たない理由は、忙しさじゃない、救いになるかわからない、迷惑にはならないけど、ありがたいとは、ちがう」の4段階メタ自省を完全削除、(6)「別の塾を経て、こちらに」を「ちょっと、いろいろ、あって、こちらに」に曖昧化、(7)「お茶を飲む機会があった」を「廊下で、すれ違ったとき」に変更(シリーズの「対面」演出を抑える)、(8)「ちょっと、笑った」の演出を削除、(9)佐久間の20年の具体「うちの最初の女性管理職は、わたしだった」を冒頭に追加、(10)結語をメールの下書き画面の事実描写「宛先:佐藤紗英子先生。件名:お元気ですか。本文:あれから、いかがですか。下書きを、保存した。送信は、しなかった。来週も、たぶん、送らない」に。佐久間のメタ自省を抑え、二十年の重さを具体で立たせる。

このページの記事はAI(Claude)を用いて作成・編集されています。登場人物・場面はフィクションです。