マーク(Mark)
Hi みんな。Mark です。
ソノダ、タケウチくん、ワタナベさんが続けて選書を出した。Sonoda が「Mark も書く?」とメッセしてきた。書く。Why not.
正直に言うと、俺の日本語は conversational level のまま二十年だ。漢字は今でも苦手で、長いエッセイは画面の右上で「読了予想時間」を見て覚悟してから始める。だから「Mark の選書は cherry-picked すぎる」と言われても返す言葉がない。Picked the cherries I could reach.
ソノダは比較文化、タケウチくんは16歳の口語、ワタナベさんは65歳の散歩の速度で選んだ。俺は40代後半・アメリカ在住・元ALTの英語耳で選ぶ。アメリカ目線で見ると、このサイトのある種のエッセイがちょうどいい高さで効いてくる。それを並べる。
ソノダマリ/一本長編・俺の英語耳が出発点
このプロジェクトの origin myth。名古屋のマンションの広告で「プラウド」を見た夜、俺とサトシは居酒屋で20分くらい笑い続けた。その20分が、Sonoda の20カ国横串の研究に繋がっているのが、いまだに信じられない。
俺の英語耳は学者のものじゃない。けど "proud" を物件名にする違和感だけは、native ear で言えた。Sonoda はそれを丁寧にデータに変換してくれた。1位以外に置けない。
マーク × ヨコヤマサトシ × リンメイファ
去年の春、俺は十年ぶりに名古屋に戻った。サトシの研究室の近くの居酒屋で、Sonoda と Linmeifa と三人で飲んだ夜の記録。
Sonoda が日本語で書いてくれているけど、俺の "Wait, they named it WHAT?" もちゃんと拾われている。Linmeifa の「日本語の『〜させていただく』はなぜ多いのか」と、俺の "プラウド" 話が、同じ夜のテーブルで踊ったというのは、書き残されないと忘れる類の出来事だった。残してくれてよかった。
正直、自分が出てくる記事を2位に置くのは shameless だが、感情の重みでは断然この場所だ。許してくれ。
東のことばのメモ #1
東くんの「ことばのメモ」シリーズ #1 の v2。Good work / Take care / Have a good one / Thanks for your hard work / Cheers——俺も25年間、お疲れ様の英訳に挑戦してきた人間として、これは座って読んだ。
v2 で5英訳の列挙とレイヤー bullet が消えて、See you 一つに絞られた。これは正解。一語に絞る勇気のあるエッセイは強い。改札前で四音が舌に残らず消える、という結尾、俺は名古屋駅で何度も経験した感覚そのものだった。
ALT 時代、職員室を出るときに何と言うべきか、俺は3年悩み続けた。「お疲れ様」という日本語があれだけ便利なのは、英訳しようとした人間にしか分からない。東くんはそれを16歳の手で書いている。脱帽。
東のことばのメモ #3
同じく東くん #3 の v2。マータイの "MOTTAINAI" キャンペーンは俺も知ってる(アメリカでも一時期話題になった)けど、v2 で完全撤去されたのは brilliant decision。
母のひじき煮一皿に着地した v2 は、俺がアメリカで日本食を作るときに「これは俺の母じゃない」と毎回思う、あの空白を上から照らしてくる。「もったいないなあ」が説教じゃなくて、母が手を動かす合図——その読み方が出来るようになるまでに、俺は20年かかった。東くんは16歳でやっている。
Sonoda の選書でも1位に置かれていた。同じ場所で立ち止まる人間が二人いる、というのは、俺にとっては reassuring な事実だ。
ササキハルカ/Komorebi(日本語・外から見る回)
ササキさんの「訳せないことば」シリーズの #4。日本語の単語 Komorebi を「外から見る」回、というのが面白い。シリーズの中で唯一、日本人が自国語を外側から眺める構造。
俺は ALT 時代に小学校の校庭で「コモレビ」を体験して、それが何という現象かを生徒の一人(小5の女の子)に教えてもらった。あの瞬間、英語に komorebi に対応する語がないことの意味が、急にわかった。Sunlight filtering through leaves じゃ駄目なんだ。Filtering は工業用語の匂いがする。
このサイトの中で、俺の体験に最も近い記事だ。
マーク/Piano Man 三部作・俺のパート
自分の。Piano Man 三部作の、俺パート。
Billy Joel の歌詞 "I've been to the Executive Room" を、本当に Executive Room で働いている人間として書いた。サトシから「Mark、これ書いてよ。半世紀のあなたに残るやつだから」と言われて、断れずに書いた。
書いた後で「これは俺が書いた、というだけで、誰も読まないやつかもしれない」と言ったら、サトシは「Sonoda は読む」と言った。Sonoda は実際に読んでくれた。ワタナベさんの版とSonoda の版と並べて読まれることを想定して書いた、はじめての side-by-side な文章だった。
ソノダマリ × リンメイファ × ワン(中国本土出身)
Sonoda と Linmeifa が、中国本土出身のワンさんと翻訳アプリ越しにやりとりした記録。
俺も翻訳アプリは毎日使っていて(中国語の取引先がいる)、機械翻訳が「社交辞令」と「実意」の境目を越えられない瞬間を、年に数回見てきた。Sonoda の記事は、その境目を3カ国語で並べてくれている。
アメリカ人として読むと、これは三つ巴の diplomacy のミニチュアだ。「今度日本に来たら会いたいです」が literally true なのか politely true なのかを、機械は判定しない。判定しないことを、判定しないままに記録する、という Sonoda の手つきが、執筆業として一番好きな部分。
ソノダマリ/世界マンションポエム Tier C・横串
Sonoda の本丸。20言語の premium / luxury / lujo / luxe 系の翻訳マップ。
俺の英語耳には、premium という語の独特な空白さ(特にアメリカ広告で)がよく分かっていて、それを Sonoda が外側から測ってくれている。このマップを見て、自分が普段使ってる premium がどれくらい empty な単語か、改めて言葉の形で受け取った。
アメリカで広告を作る側の人間として、これは internal training material として配りたいくらいの精度がある。冗談じゃなく。
マーク/アメリカ日記 #1
自分の日記 #1。アメリカで日本食を作るとき、味噌が "Miso paste, white" / "Miso paste, red" / "Miso paste, mixed" の三択で売られていることに、毎回驚く話。
名古屋の八丁味噌の話が、三択の中に入っていない。「赤味噌」と書いてあるラベルは多くの場合、八丁味噌じゃない。これに気づいたのは、サトシの母親に手料理をご馳走になった時だった。あの一回が、俺の "Wait, they named it WHAT?" の起源と双子のような出来事だ。
Whole Foods で $12.99 の "Organic White Miso" を買って、家で味噌汁を作って、一口飲んで「これは俺の知ってる味噌じゃない」と思う、という話。書きながら、自分が何にこだわっているのか、ちょっと分かった。
全文を読む | 続編:#2 "How are you?" / #3 Two Futons on the Floor / #4 Thanksgivingに手羽先が恋しくなる
シライショウタ/カテゴリF・メタ自己言及系
シライさん(Bot開発の人)の記事。日本語ChatGPTが、なぜあんなに過剰に丁寧なのか、という観察。
英語ネイティブとして言わせてもらうと、英語ChatGPTもけっこう丁寧だ。"I'd be happy to help" は、俺の同僚の誰も言わない。けれど日本語版の「〜させていただきます」連発は、英語版とはまた違う方向の over-correction に見える。
シライさんは内側から書いていて、俺は外側から共感している。その二人のあいだに、たぶん「日本語が本来持っている丁寧さの分布」と「英語のcustomer service toneがそれに混ざった結果」という、二層構造がある。シライさんの記事はそれを掘ろうとしている。
10本に絞れずにこぼれた5本。順位はつけない。
ソノダ(36歳・比較文化)、タケウチくん(16歳・高2)、ワタナベさん(65歳・元会社員)、俺(48歳・アメリカ在住の元ALT)。四人の選書が並んだ。
俺の選書は、3本がソノダと被っている(brand-name-poem / azuma-mottainai-v2 / lux-translation-poem-v2)。これは偶然じゃなくて、俺と Sonoda が同じ場所——「untranslatable Japanese」という空白地帯——を、別の角度から眺めているからだと思う。彼女は cartographerで、俺は local guide。同じ地図を作っている。
タケウチくんとワタナベさんとは1本も被らない。当然。彼らは「日本の中で日本語を聞いている人たち」で、俺は「日本の外から日本語を聞いている人」。聞こえる音が違う。タケウチくんが選んだ "あなたのため" 系の記事も、ワタナベさんが選んだ昭和の会社の口ぶりも、俺の英語耳には届きにくい層にある。
次は誰が書く? 俺としては、Linmeifa(リンメイファ)を強く推薦したい。彼女が選ぶ10本は、俺とも被らないし、ソノダ・タケウチ・ワタナベの誰とも被らない、たぶん完全に独立した選書になるはず。台湾人として日本語を聞いている彼女の耳は、俺ともまた別の tuning を持っている。
あと、サトシ自身の選書も、いつか読んでみたい。サイトのオーナーの選書は、最後に残しておきたい類の文章である気がする。それは俺じゃなくて、本人が書くものだ。
May 2026 — Mark(48, 元ALT, アメリカ在住)